第二次大戦中に誕生し短期間だけ存在した
女子プロ野球チームの選手たちの奮闘を描くスポーツ・ドラマ。

プリティ・リーグ

A League OF THEIR OWN

1992  アメリカ

128分  カラー



<<解説>>

第二次大戦末期の1943年から数年の間、実際に存在した女子プロ野球チームをモデルにした作品。『ビッグ』の女流監督ペニー・マーシャルがメガホンをとり、その作品の主演だったトム・ハンクスを再び起用。ジーナ・デイヴィスとロリ・ペティの姉妹役をはじめ個性的な女優がそろい、マドンナの出演も話題に。本作は女子プロ野球選手に捧げられている。
男たちこぞってが戦場に赴いてしまい、男性本位のメジャー・リーグも選手の流出にあえいでいた頃の話。男性がダメなら女性でプロ野球リーグを作ろうということになり、全国からアマチュアの女子選手が集められる。女性プロ野球という前例のないスポーツに選手も観客戸惑っていたが、やがて全米を熱狂さていくようになる。銃後の家庭を守るだけでなくスポーツの世界でも頑張っていた女性たちに敬意を表し、彼女たちの奮闘をユーモラスに描いていく。その一方で、邦題のせいかもしれないが、必ずしも美談でなく、“内助の功”の名のもとに女性が男性の代役をさせられてたことへ皮肉めいた意味も感じられる作品でもある。
アメリカのお家芸の野球映画といっても、選手のプロとしての誇りや意地を懸けたドラマではないし、チームの優勝を目指したサクセス・ストーリーでもない。物語の背景が戦時下であり、また、主人公が女性であることから、普通の野球映画とは一線を喫した人間ドラマが楽しめる。男性の登場人物、例えばハンクス演じる監督は人生の再起を女子リーグに懸けているし、D・ストラザーン演じる創設者は女子リーグの存続に人生を懸けたりしているが、当の女子選手たちには、そういった男性的なモチベーションはないようだ。彼女たちにとって大事なのは、試合の勝敗よりも、戦地に赴いた夫のことだったり、結婚や子育てのことだったりするのである。その中でも、チームのスターである主人公姉妹の確執がドラマの軸になっていて、結末は野球映画としては定石を破っているものの、家族のドラマとしては感動的なものとなっている。
顔を土と日焼けで汚しながら演じたデイヴィスら女優陣のひとりひとりの好演が光るが、ハンクスの数少ないヨゴレ役がいちばんの拾い物。酒浸りで生活態度もデタラメなという男の背景を、本気でツバを吐くという仕草ひとつで説得力を与えた芝居は、彼のベスト・アクトかもしれない。



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