中つ国の命運をかけた最終決戦がゴンドールの首都で始まる。
その時、フロドの長い旅も終りを告げようとしていた。
「指輪物語」の映像化、シリーズ完結編。

ロード・オブ・ザ・リング
王の帰還

THE LORD OF THE RINGS
THE RETURN OF THE KING

2003  アメリカ/ニュージーランド/ドイツ

201分  カラー



<<解説>>

数多くのアーティストが挑戦しながら、誰一人成し遂げられなかった「指輪物語」の映像化がついに完結。この三部作はまさに事件であった。最近のファンタジーに退屈していた観客にとって、これほどまでに素晴らしい作品が登場するなどとは思っていなかったからである。かつてないほどのスケールと完成度を誇った前二作。それらを楽しんだ観客にとって、完結編となる本作に対する期待も桁外れだろう。しかし、どんなに大きな期待を持って観賞に望んだとしても、それを凌駕するだけのものを観せてくれるはずであることは、十分に理解しているはずだ。本作に対して、疑問や不安も持つだけ無駄であり、つべこべ言わずに大船に乗った気持ちで楽しめばいいのである。
前作『二つの塔』で観客の度肝を抜いたのは、圧倒的な迫力で描かれる戦闘シーンである。あの時点で、既存の作品の追随を許さない映像を作り上げてしまっていたが、本作では失速するどころか、さらに迫力と密度を増した戦闘シーンがスクリーンをはみ出さんばかりに繰り広げられる。巨大な物が目の前を横切っていくという驚きだけでなく、数万の軍勢の一人ひとりの動きがこと細かく描かれていることにも改めて驚かされる。CGで丁寧に織り上げられた映像は芸術の域に達していて、画面隅々に目を凝らせば凝らすほど、粗が見えるどころか、新たな発見があり、その度に溜息が出る。この妥協することを知らないプロの仕事があと何十年経っても観る人を驚かすことは、まったく想像に難くない。
冥王サウロンと人間たちの間の最終決戦を描いた本作は、始め終りまで戦闘シーンが続くが、戦闘の最中での人間ドラマも、前作以上に描き込まれている。決死の覚悟で最後の戦いに挑むセオデン王。悲劇的な最期を迎えるデネソール王。運命よりも愛に生きようとするアルウェン。フロドとサムの指輪をめぐる確執。お約束のレゴラスとギムリと張り合いも楽しい。特に本作ではアラゴルンの魅力が良く出ていて、ゴンドールの王として成長していく様はニクイくらいに恰好良い。これほど盛りだくさんの内容で目まぐるしく展開していくが、緩急の絶妙な語り口が見事。観客の興味を続かせる牽引力は前二作よりも優れ、三時間半の間、一瞬も目の離せない作品になった。壮絶な本編が終って緊張が解かれた後には、素晴らしい余韻を残すエピローグが用意されている。
作品の面白さに必ずしも繋がらないため、あまり重視されないことかもしれないが、三部作の間で設定やエピソードにきちんと整合がとれているのは、やはり観ていて気持ちがいい。映像的な部分を優先したため原作に忠実とのではいかなかったものの、物語に一貫性が保たれたのは、当初から三部作として計画的に製作されたからである。しかし、ここまで一分の隙がない物語を作ることを可能にしたのは、ジャクソン監督をはじめとするスタッフと出演者の原作に対する愛情と、すごい作品を作ってやろうという情熱があってこそだったと言えるかもしれない。優れた映像やドラマがあったことはももちろん、物語世界の完成性も含めて、この三部作が映画史上最高の一大ファンタジー・アドベンチャーであることは、なんらの疑いがないのである。



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