巨大空港の管制システムが何者かに乗っ取られた!
着陸不能となった飛行機の乗客と妻を救うため、マクレーン刑事がテロに単身戦いを挑む。
ダイ・ハード2
DIE HARD 2
1990
アメリカ
124分
カラー
<<解説>>
大ヒットした前作の超高層ビルから舞台を巨大空港に移したシリーズ第2弾。航空パニックアクションを基調とたド派手なアクションシーンが見どころ。監督にはB級アクションやホラーで地道にキャリアを重ねてきたレニー・ハーリンが大抜擢。彼の代表作となった。原作は前作の作者とは別の作家の作品であり、それを「ダイハード」シリーズとして大幅に脚色。空港警察、飛行機の乗客、テレビレポーターなど、様々な立場の人物を配し、事件に対する彼らリアクションを次々と追っていところは、「エアポート」シリーズのような群像劇を予感させるが、あくまで主人公マクレーン刑事の孤立奮闘をメインに据えた完全無欠のヒーロー活劇である。
前作の魅力だったビルという密室ならではの閉塞感や緊張感は失われているが、その代わり、空港ならでは設備やシステムを生かした、アイデア溢れるサスペンスとアクションで見せていく。主人公は、常に絶体絶命の危機にさらされていて、常に観客の予想もつかない方法で危機を乗り越えていく。「次はどうなる!」という異常までな求心力で観客をひっぱっていくスリラーの巧みさは、テレビシリーズのヒット作「24」などにも連綿と受け継がれているものと言ってもいいかもしれない。また、アイデアだけに引きずられことなく、実際のシーンがアクションと見事に合致しているところも気持ちが良い。アクションシーンは実写だけでは限界があるし、SFXのみではリアリティが失われる。CG全盛の現在は、後者のような空虚なアクションシーンばかりになってしまったが、『ジュラシック・パーク』がもたらしたCGビッグバン直前に作られた本作のアクションシーンは、SFXと実写のバランスが絶妙で、当時としては空前絶後の迫力の見せた。
それにしても、本作がヒット作の続編として納得と満足が出来る作品に仕上がったのは、やはり、キャラクターの魅力が発揮された脚本と演出があったからこそだろう。ブルース・ウィリス扮するマクレーン刑事の特異なキャラクターはそのままだが、空港占拠事件にピタッとはまっているのである。不精だが責任感と行動力だけは人一倍という因果な性格のおかげで、またもやクリスマスの夜に大事件に巻き込まれるマクレーン刑事。めんどくさそうなしかめ面で、悪態をつきながらも、なんだかんだで超人的な活躍をやってのけるのが痛快だ。ひとつ前作と違っているのは、彼がすっかり有名人になっているということ。テロリストまでも彼のことを知っているのである。前作のパロディのようにも思えるが実は、彼が有名人であるという設定はストーリー上で重要だ。マクレーン刑事の英雄的活躍に反感を持つ空港側から部外者扱いされたために、彼はゲリラ的に活動するはめになるのである。また、マクレーン刑事のしぶとさとしつこさも前作以上に強調されているのも楽しい。事件の現場に必ず現れ、その度に、テロリストから「またお前か!」とあきれられるマクレーン刑事。そのあまりのしつこさは、極悪非道のテロリストでなくてもキレてしまいそうなほどだ。
本作でしばしば批判の対象となってしまうものに、普通の神経ではありえないくらいの能天気さでがある。罪のない人々が盛大に殺されまくっているのに、それでも自分の妻が無事でさえあれば……とうのは、真面目に観ているとヒイてしまうところも確かにある。ただし、能天気さも本作の魅力のひとつであることは間違いないのである。本作は、ただの勧善懲悪物ではなく、ハッタリとユーモアが利いたエンターテインメントであると同時に、「もしもこんなアクションシーンがあったら」という夢がめいいっぱいつまったファンタジーで、まさにこれこそが映画なのである。アクション映画以上のアクション映画として、90年代を代表する大作となったが、それだけに、良くも悪くも数段飛ばしでハードルを上げてしまった困った作品でもある。これに続くアクション映画は本作を超えることを求められてしまい、ハーリン本人だけでなく、プロデューサーは製作費とアイデアをひねり出すことに苦しめられたはずである。
ストーリーはこちら