急激な進化により特殊能力を持つミュータントが生まれる近未来。
人間を守ろうとする“X−メン”と世界征服を企む“ブラザーフッド”の壮絶な戦いを描く
アメコミ原作のSFアクション。

X−メン

X-MEN

2000  アメリカ

104分  カラー



<<解説>>

二大アメコミ社のひとつDCコミックは、人気キャラクター「スーパーマン」、「バットマン」などを映画として定着させていたが、もうひとつのアメコミ社マーベル・コミックは、コミックの映画化にはあまり積極的ではなかったようだ。本作は、マーベル・コミックの一番人気であるスタン・リー原作の「X−MEN」の映画化。監督は『ユージュアル・サスペクツ』のB・シンガーが抜擢。VFXをふんだんに駆使し、マーベルの特徴である前のめり・つんのめりのアクションを再現。2003年に続編、2006年に最終章となる第3作が公開。また、本作の成功が、同じマーベル・コミック原作である「スパイダーマン」、「超人ハルク」などの映画化につながっていった。また、B・シンガーは「スーパーマン」の新作を手がけることに。
後の『スパイダーマン』、『ハルク』にも受け継がれるが、荒唐無稽なストーリーとハイテンションなアクションという見かけに反して、マイノリティへの差別をテーマにした社会派の作品である。人間と異なるミュータントの悲哀や苦悩ががシリアスに描かれ、主人公たちも超人ヒーローにしては楽天的ではなく、始終、神妙な顔をして悩み続ける。『スーパーマン』より『バットマン』のノリに近いようだが、バットマンのように個人的な性癖についての悩みではなく、自分を含む世界を視野に入れた悩みであるため、幾分深刻なものとなっている。のっけから、ホロコーストの話であるというのも重苦しい。
物語は、プロフェッサーX率いる“X−メン”チームと、マグニートー率いる“ブラザーフッド”との対立を中心に展開していく。同じような理想を持ちながら、手段が異なるというだけで、戦わなければならない二つのチームの姿は、どこぞの民族対立のような不毛な争いを思わせる。一応、X−メン側が正規軍ということではあるが、また、マグニートーに対しても同情的で、勧善懲悪で割り切られていないところが良い。マグニートが自分の苦しみ知ってもらうため、上院議員をミュータントにするくだりなどは、オーバーではあるが、SFの持つ社会批判の効果が発揮された好シーケンスで、テーマについて考えさせるものがある。
いよいよ、X−メンとブラザーフッドの激突する後半は、前半の暗い気分をぶっ飛ばす超絶アクションで畳み掛けていく。自由の女神像での決戦(『レモ/第1の挑戦』と同じく、『逃走迷路』へのオマージュ?)が画(え)になりるばかりでなく、ミュータントの特殊能力をなおざりせずに、無理なくアクションに組み込んでいるところが、この手の作品の中では良心的と言えそうだ。ところで、ミュータントは“人類には急激な進化により”発生したとされているが、その能力というと、“眼からビーム”といった進化論を無視した突拍子の無いもの。これは、すべてのアメコミに当てはまるものかもしれないが、ストーリーよりも、設定にノレるかどうかが、作品を楽しむための最大のポイントかもしれない。



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