西部開拓時代の英雄ワイアット・アープの生涯を描くドラマ。
ワイアット・アープ
Wyatt Earp
1994
アメリカ
191分
カラー
<<解説>>
『荒野の決闘』、『OK牧場の決斗』などの題材となった西部開拓時代の伝説的英雄ワイアット・アープの生涯を描いた大作。前年に公開された『トゥーム・ストーン』と競作であり、ネオ・ウェスタンの代表的な作品となった。物語の前半は、ワイアットが保安官になるまでの青春時代、中盤からは有名なOK牧場の決闘の顛末、そして、終盤はスタージェスが『墓石と決闘』でも描いた後日談が描かれていく。監督は、90年代前半のウエスタン・ブームへのさきがけとなった『シルバラード』を撮ったカスダン。主演は、『シルバラード』にも出演していたコスナーで、青年時代から保安官引退後の晩年までを演じきる。共演は、ドク・ホリデイ役のクエイドや、父親役のハックマンなどの豪華キャスト。
同じくワイアット・アープを描いた『トゥーム・ストーン』とは、見せ場である決闘シーンが、史実に基いて路上での決闘として描かれることを除けば、まったく異なるスタンスを見せている。『トゥーム・ストーン』が大胆な解釈でワイアット・アープ像に見せたのに対し、本作は史実に忠実に掛け値なしのアープ像に挑んでいるところが意欲的だ。血の絆を信じる父の哲学を基盤として育ち、後に妻を失ったショックで、他人である女性を信じられなくなり、その結果、兄弟以外の人間には冷徹な男として誤解されるようになった悲劇の男ワイアット。物語は、そんな彼の苦悩と愛の日々を、ワイアットの心理を描写を中心に丹念に追いかけていく。あまりに丁寧に描いた結果、三時間を越える大作となった。
兄弟やドクとの絆を以上に、兄弟の妻や愛人たちとの対立を見せてしまうところが、これまで英雄譚と最も異なるところだ。理想的な英雄ではない一人の男としてのワイアットの姿に批判的に迫った本作は、英雄の活躍を描く作品ではなく、ジャンルとしても、西部劇というより伝記映画や人間ドラマといった方が正確かもしれない。作品のテーマは、ラストでワイアットの伝説を信じる少年についてジョージーが言う台詞に集約されている通りである。英雄の真実などには興味が湧かないという人には、残念ながら向かない作品と言える。後に未公開シーンを加えた、ディレクターズカット版(212分)がビデオ発売された。
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