老舗レコード店「エンパイア」の店員は個性的な若者ぞろい。
店を買収から救うために店員たちが奮闘したある一日を描く青春ドラマ。
エンパイア レコード
スペシャル・エディション
EMPIRE RECORDS
REMIX! SPECIAL FAN EDITION
1995
アメリカ
105分
カラー
<<解説>>
『タイムズ・スクエア』、『今夜はトーク・ハード』といった音楽系青春映画の秀作を撮ってきたアラン・モイルが、90年代当時に発表した最先端の作品。『タイムズ・スクエア』ではライブ・ステージを題材に、『今夜はトーク・ハード』ではラジオDJを題材にしたモイルが、今回、目をつけたのはミュージック・ビデオ。とは言っても、MVそれ自体を題材にした作品ではない。一箇所だけ、劇中歌「言わないでモナムール」のビデオが挿入されるシーンがあるが、ビデオそのものを見せるのはそこだけ。あとは全編、ドラマにMV的な手法を導入した作品なのである。
「人生はレコードのよう。ぐるぐる回るから」などという台詞が劇中にある。まさに目まぐるしく回っていく青春を体験させるかのように、雑多な短いエピソードをロック・ミュージックに乗せて、次々とカットアップしていく。そして、そのエピソードの連続の中から、「店の買収騒ぎ」という軸となるストーリーを紡ぎだしていく。レコード店の一日を描いてはいるのものの、青春の1ページをスケッチすることを意図しているのではない。恋や友情や夢といった青春のあらゆるものすべてを90分にギュっと凝縮したような、欲張りな内容となっている。
エピソードを詰めに詰め込んだ分、リアリティは切り捨てられているが、思いのほか群像劇としてのバランスは上手くとられている。飄々としたルーカス、芸術家志望のA.J.、スターに憧れるマーク、アバンギャルドなデブラ、バンドマンのバーコ、奔放なジーナ、優等生のコリー。個性的な店員たちのそれぞれに、ちゃんと見せ場が設けてあるのだ。
自殺未遂や薬物依存といった深刻なエピソードはあるにはあるが、『今夜はトーク・ハード』ほどのメッセージ性はなく、「悩みも踊って吹っ飛ばしちゃえ」といったノリを貫いている。とにかく楽しい作品だが、あまりに軽すぎるノリと、めまぐるしすぎる展開にクセがあるので、MTV的なポップ・カルチャーにノレるかノレないか(あるいは、寛容かそうでないか)によって、好き嫌いが激しく別れそうではある。もし、ノレれば、お気に入りの映画のひとつに加わることは請け合いだ。
『スペシャル・エディション』である本編は、オリジナルに6分の未公開シーンを追加したもの。出演は、レニー・ゼルウェガー、ロビン・タニー、『アルマゲドン』以前のリヴ・タイラーら若手のホープたち。使用曲は、バグルス、フライング・リザーズのスタンダード・ナンバーを始め、ジン・ブロッサム、クランベリー、クラッカー、エドウィン・コリンズ、トード・ザ・ウェット・スプロケットの楽曲など、新旧のニューウェイブ/パンク/オルタナティヴの数々。さらに、知る人ぞ知るヘヴィメタ・バンドのグワァーも出演。ちなみに、トビー・マクワイアがクレジットされているため、彼も出演しているという噂があるが、そのシーンは削除されているため、おそらく探しても無駄。
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