<<ストーリー>>

1959年以来、町の人々から愛されている老舗のレコード店「エンパイア」。その日の閉店係だったルーカスは、売上金を数えている時、店長のジョーのデスクである書類を発見。それは、大手レコード店チェーン「ミュージック・タウン」が「エンパイア」を買収するという契約書だった。ルーカスにとって、ジョーは自分を施設から救い出してくれた恩人でもあった。ジョーの店をつぶしてなるものか、と、発起したルーカスは、売上金の9000ドルを掴んでアトランティック・シティのカジノに向かった。ところが、あっけなく、持ち金のすべてをスってしまったのだった。
翌朝の開店前、ルーカスは出店して来た店員のA.J.とマークに別れを告げ、バイクで去っていった。「カジノに行ってきた」と話すルーカスの様子が気にはなったもの、A.J.とマークは自分自身のことで頭がいっぱい。「自分は将来、スターになる」と信じているマークは、いずれ結成しようと思っているバンドの構想をめぐらせていた。一方、芸術家志望のA.J.は、ここで働き出して5年目にして、片想いの相手の店員コリーに「1時37分までに告白する」と宣言していた。
コリーは美人でスタイルもよく、そのうえ頭も良い最高の女の子。だが、当のコリーはA.J.のことを友達以上には思っておらず、彼とは別のある人物に17歳の処女を捧げようと意気込んでいた。その人物とは、往年の流行歌手レックス・マニング。今日、新曲「言わないでモナムール」のプロモーションを兼ねたサイン会のため、来店する予定なのである。コリーは、経験豊富な親友のジーナのアドバイスを受けて赤いブラを着けると、遅番にもかかわらず、いつもよりはやく店にやってきた。開店からしばらくして、コリーの妹が店に走ってやって来た。コリーは妹の手にしていたハーバード大の合否通知を受け取ると、胸の高鳴り押さえながらその封を切った。結果は合格だった。コリーは店員の中でただひとり、この田舎町から脱出することが決まったのだ。
コリーがジーナたちからの祝福を受けていた頃、ジョーは、オーナーのミッチ・ベックから「売上が入金されていない」という連絡を受けていた。「まだ金庫に入れたまま」と慌てて言い訳をしたジョーだったが、金庫の中を確認してみて愕然とした。そこにあるはずの、9000ドルが消えていたのだ。朝から姿の見えないルーカスに電話をしても、本人は不在。彼の仕業であることは明らかだった。A.J.はジョーから「ルーカスを探せ」と命じられるが、その直後、彼の目の前に天井からルーカスがひょっこり現れた。ジョーに見つかり、オフィスに連れていかれてもルーカスはいたって冷静沈着。カネの行方を追及されると、「カジノで使った」と正直に告げた。ジョーは、「カネが戻るまでソファから離れるな」とルーカスに命じたのだった。
遅刻してきた店員のデブラは、店に来てからずっとオフィスのトイレにこもりっきりになっていた。ルーカスとA.J.は、ようやく、トイレから出てきたデブラの姿を見て、呆然とした。彼女は頭を丸坊主にしてしまったのだ。A.J.はデブラの右手首に包帯が巻かれていることに気付き、訳を訊こうとしたが、ルーカスに止められた。「レックスとなんか会いたくなかった」と言い残し、レジに立ったデブラは、髪を切って何かが吹っ切れたのか、仲の悪かったジーナたちとも親しげにおしゃべりをするのだった。
ロック・マニアののエディが出店してきた頃、9000ドルを回収することを半ば諦めてしまったジョーは、店員たちに「ミュージック・タウン」の雇用契約書とユニフォームであるエプロンを配りはじめた。加えて、あの9000ドルがなければ、「エンパイア」は買収され、来週から「ミュージック・タウン」になってしまうことを店員たちに説明した。ジーナたちは、契約書に書かれた厳しい規則に早くも不満顔。「エンパイア」の良いところは、好きな格好が出来て、好きな音楽をかけられるということ。その自由と個性が、「ミュージック・タウン」の店員を画一化するような規則によって奪われてしまうのだ。
「ソファから離れるな」と、言いつけられていたルーカスだったが、トイレに行きたくなってしまってはどうしようもない。ソファの一部であるクッションを抱えて店内に出て行ったルーカスは、CDの棚の前で怪しい動きをする少年を発見した。万引きに気付かれた少年は店を飛び出すが、外に先回りしていたルーカスに捕まった。ラップとメタルのCDを万引きしたその少年は、ウォーレンと名乗り、ルーカスと一緒にソファに座らされることになった。
ジーナが「ミュージック・タウン」の厳しい規則に対抗して、裸エプロン姿を披露していた時、レックスがマネージャーのジェーンを伴って店にやってきた。レックスが短く切りすぎた髪を気にしながら、おばさん相手にサイン会を淡々とこなしている間、ジェーンはジョーに悩みを相談。実は、自分はレックスの音楽が嫌いで、落ち目のスターの相手にも嫌気がさしていたのだ。昔はバンドをやっていて、夢もあったジョーは、「退屈な人間になってしまった」ともらすジェーンを励ました。ジョーの励ましに勇気を得たジェーンは、その場で仕事を放り出し、どこかへ出かけてしまった。ジェーンと話したことで、昔の夢を思い出したジョーは、現実から逃避するかのようにドラムを乱打。と、そこへ、ミッチが売上を取りに店にやって来た。ヤケクソになったジョーは、紙束を詰めた集金袋をミッチに手渡したのだった。
ルーカスが万引きを通報したため、店に警察がやってきた。ウォーレンは、9000ドルを盗んだルーカスが見逃されて、自分だけが捕まることに納得がいかず、復讐を叫びながら警察に連れて行かれた。サイン会が一段落し、コリーの計画が実行に移される時がやってきた。一方、店の屋上では、A.J.がコリーへの告白の仕方をあれこれ考えていた。そんなことをしているうちに、時刻はもう1時半……。



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