男運の悪い女性がようやくめぐり合った理想の彼氏は未来人?
本邦未公開の不思議なラブストーリー。

ハッピー・アクシデント

HAPPY ACCIDENTS

2000  アメリカ

110分  カラー

日本劇場未公開



<<解説>>

母親譲りの要領の悪さから男運に恵まれない女性ルビーが主人公。彼女は偶然によって理想の男性とめぐり合えることが出来たが、その男サムは自分のことを2470年の未来からやって来た未来人だと言い切る変わり者。ルビーは二人の幸せのために、サムのホラ話に付き合うことにするのだが……現実の恋愛においても、カップルの間では付き合っていく上で様々な障害が持ち上がるものが常である。それは、ささいな習慣上のすれ違いであったり、金銭や健康の問題であったりと、大小はあるものの、その隙間をどのように埋めるかによって、二人の恋の行方が決まってくるといってもいいかもしれない。
タイムトラベルとロマンスという取り合わせはありきたりに感じられるが、本作はそれ少しを捻り、恋人の間で持ち上がる障害をSF仕立てのストーリーで少しオーバーにして見せている。ここで描かれる障害とは、彼氏の「自分が未来人だという妄想」であり、その障害をどのようにして乗り越えていくか、ということにテーマが絞られている。ルビーの男運の悪さは、父親がアルコール依存症という恵まれない家庭環境に育ったということに原因のひとつがあるのだが、それに絡め、母親が娘へおくったアドバイスがテーマを集約しているようだ――「恋愛はフェアではない」 すなわち、勾配があるから流れが生じるごとく、フェアではないからこそ情熱(passion)が持てるのである。
映像で目を引くのは、手持ちカメラによる揺れ動くフレーム、ぼんやりとした淡い画面、時系列をバラバラにしたシーンなどで、恋が思い通りにいかないもどかしさを映像的に表現しているかのようである。マリサ・トメイ、ヴィンセント・ドノフリオという出演はあまりぱっとしないが、二人の純情さが伝わってくるようなさわやかな芝居は好感が持てる。実用的なメッセージが込められた掘り出し物のラブストーリーとして観て損のない良作だ。感情と時間というモチーフを鮮烈に表現した感動のラストシーンも必見。
本作は日本では劇場公開されず、ソフトも未発売。2005年2月2日にNHK衛星第2で放映された。



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