<<ストーリー>>
ニューヨークに暮らすルビー・ウィーバーは、付き合うのはヘンな男ばかりで、なかなか恋が実らないのが悩み。そんな彼女がオペレーターの仕事をクビになったばかりのある日、通りのベンチでサム・ディードと運命的に出会った。サムは愛と時間について熱心に語るちょっと不思議で優しそうな男。ルビーは彼とその場で別れてしまうが、後日、ベンチに忘れた本を家まで届に来てくれたことをきっかけに、付き合いが始まった。そして、ルビーはサムのペースに乗せられて、彼を自分から口説き、すぐに同棲生活がスタートしたのだった。
サムはアイオアのドゥビューク出身で、23歳の時に家出をしてから家族とは連絡をとっていないらしい。妹がいたが、昔に亡くしているという。ルビーは、自分のことを「唯一の女性」と言ってくれるサムにぞっこんだったが、気になることもいくつもあった。犬を異常に怖がること。腕にバーコードの刺青があること。「因果連鎖を断て」などと、おかしな寝言を言うこと。そして、時々、眩暈のような発作を起こすこと。
ルビーは謎の多いサムの秘密を知りたくて、彼の留守中に彼のスケッチブックを盗み見た。そこにはセクシーな女性の肖像画と“クリスティ・デランシー”という名前が書き連ねてあった。ルビーに問い詰められたサムは、自分は2470年の未来のからやってきたと説明。ルビーは思わず笑い出してしまうが、サムは真剣に話を続けた――
人類のほとんどが滅んでしまった未来。人間は人工授精で生まれるが常だった。だが、サムは両親の昔ながらの方法によってこの世に生まれてきた。クリスティ・デランシーというは、時空の“バックトラベル”の仲介人の名前である。サムは人類の再発見を目的として、1999年の現代にやってきた。出発前にサムは、20世紀の品物を売る店にあった写真に映っていたルビーに魅せられた。サムは写真を思い出しながらスケッチブックにルビーの絵を描いた。そして、現代で彼女のことを探した――「君と出会えたのは“幸せな偶然”だった」とサムは言った。
ルビーはサムのことを親友のグレッチェンに相談した。グレッチェンは、サムがゲームをしたがっているのだと指摘。グレッチェンのアドバイスに従い、ルビーはサムのロマンチックな物語を信じることにした。ルビーがサムのゲームに付き合ううちに、いろいろなことが分かってきた。サムがときどき陥る発作は、バックトラベルの後遺症である“RTDS”、通称“ドラッグ”で、時空の飛躍に精紳がついていかなくなる時差ボケのような現象だという。ルビーがサムを両親にはじめて紹介したときも、その発作が起きた。“ドラッグ”は普通、次第に起こらなくなるものだが、ひどい場合は一生、時間が逆行したままになるのだとサムは説明した。
サムは妹のことも話した。妹は海の中に見つけた何かを拾おうとして、そのまま帰ってこなかったのだという。バックトラベルの理論には、「それを行なうものが生存していた時間に行けない」という“ブリノビッチの第二法則”があるため、サムは妹を救いたくても救えなかったなのだった。だが、その法則を討ち破る“チーズマンの法則”があるのだとサムは言った。それは強い感情によって、別の未来を作り出す法則だった。
ルビーはサムの語る物語を楽しんでいたが、ある日、その夢を打ち砕くようなボロが出た。スーパーで売っていたフォトスタンドのサンプルの写真が、サムの財布の中にあった彼の家族の写真とまったく一緒だったのだ。一方、サムの話はさらにエスカレートしていった。彼が現代にやってきた本当の理由は、殺人の濡れ衣を着せられたためだという――父親が“自由の戦士”という革命派であったため、サムは警察にマークされていた。そして、妹が事故死した時、それがサムの故意によるものされてしまったのだった――
ルビーはセラピストに通い、サムのことを相談するようになった。セラピストのマギー・アン・フォードは、サムについての話を聞き終わると、彼に“TLE”という脳障害の疑いがあると告げた。ルビーはマギーにサムを診せることにした。サムはルビーにすすめられ、マギーのセラピーを訪ねた。だが、マギーのもとから戻ってきても、サムはいつもの調子で訳の分からないことを言い続けた。ついに、キレたルビーは、家からサムを叩き出そうとした。だが、サムはルビーの憤慨を見ると、「これで因果連鎖を断てるかもしれない」と歓喜した。
サムは“チーズマンの法則”を適用しようとしているらしい。だが、なぜ“チーズマン”によって因果連鎖を断つ必要があるのか? その理由をサムから聞いたルビーは呆れて言葉を失った。ルビーは今度の金曜日に死んでしまうというのだ。ルビーはさっそくサムの話をマギーに報告した。マギーは、サムを分析し、彼はがルビーを救うことで妹の死を償おうとしているのだと断定。サムは自分を救うことしか考えていないのだという。ルビーは、サムとすぐに別れるべきだとマギーに忠告された……。
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