息子の身の危険を未然に防ぐため、30年後の未来にやってきた高校生マーティ。
ところが、彼のちょっとした悪戯がきっかけで現在や未来が様変わりしてしまった。
現在・過去・未来を縦横無尽に駆け巡るSFアドベンチャー。
バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2
BACK TO THE FUTURE PART II
1989
アメリカ
108分
カラー
<<解説>>
前作のヒットを受けて製作され続編。前作はそれ一本で一応の物語が完結していたが、本作は第三作と同時に企画されているので、その続きとして新たに作られた物語は第三作へのつなぎ的な内容と言っても良い。言うなれば「スターウォーズ」形式の続編である。
本作は完全な続き物である他の二作と合わせて観ることが必須。というか、通して観ないとさっぱり訳の分からない作品であるが、続編であればこその面白さが十二分に発揮されたという意味では、ちょっと類を見ない作品である。それというのも、タイムトラベルという題材が、続編作品が陥りやすいテーマやエピソードの繰り返しという欠点を逆手に取ってしまっているところで、前作で貼られていた伏線が作品を跨いで再利用されているところが観ていて楽しいのである。
未来、現在、過去とめまぐるしく展開する物語の中、前作以上に凝った筋運びのギミックが見どころだが、ポイントは「別の時代の自分に会ってはいけない」というルールである。「親殺しのパラドックス」に代表されるタイムパラドックスは、過去に遡って自分のした行為が自分自身の存在を危うくした場合の矛盾についてである。第一作は、まさに「親殺しのパラドックス」を基本的な設定としてしていたが、本作はもっとルールが厳しくなり、自分自身と出会うだけで「宇宙崩壊」となりうるのである。そして、このルールを破らずに、いかにして事件を解決するかというところに、パズル的な面白さがあり、前作の名シーンが登場する後半の1955年のパートでは、マーティが自分自身の邪魔をすることなく、別の事件に取り組んでいく様子が、スリリングに描かれているのである。ちなみに、2015年のビフが1955年のビフと接触している場面があり、ルールを破っているように思えるが、「1955年のビフは相手が自分自身だとは気付いていないからOK」と解釈したい。
新たに加えられた考え方のもう一つは「パラレルワールド」である。「パラレルワールド」とは、つまり、可能性の数だけ無限に宇宙が存在するという、SFではお馴染みの理論だが、本作では、マーティが悪戯をしようとしたことを発端に、まったく別の1985年が出来てしまったというのがそれで、もとの1985年を取り戻そうとすることが物語の動機となっている。ここで、未来で起きてしまった誤りを正すために、再び過去に戻らなくてはならなくなるのが面白いところなのだが、その理由を「パラレルワールド」を使ってある程度、納得の行く説明がなされている脚本が見事だ。
物語の面白さはもちろん、続編ならではのサービス溢れる小ネタの数々もお楽しみだ。前作より引き続き、一人二役、三役はあたりまえ。今回、主演のフォックスは未来の中年マーティに加え、息子のジュニアと、なんと娘の役まで女装して演じている。また、次作では開拓時代の先祖までも演じているので、最終的には五役ということになる(ビフ役のトーマス・F・ウィルソンも五役)。ドク役のロイドは、前作は特殊メイクにより老け役を演じていたが、若返りの手術をしたという設定で老人メイクを剥がして見せるという、楽屋オチ的なシーンがあったりする。
前半の未来のシーンも小ネタが満載だ。シリーズの中心的な場所である時計台の広場では、製作総指揮のスピルバーグをネタにして、スピルバーグ二世による『ジョーズ19』が上映されていたり、カフェに入れば、マイケル・ジャクソンとレーガンとホメイニ師が迎えてくれるというオフザケがあったり(ちなみに、このカフェに置いてあるレトロ・ゲームをいじっているの子供の一人がイライジャ・ウッド)。また、この広場でマーフィとグリフが前作の追いかけっこをパロディ的に再現してくれるが嬉しく、トーマス・F・ウィルソンが肥やしに突っ込むというのも、シリーズのお約束になっている。
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