タイムマシンで30年前の過去にやってきた高校生の冒険を描くSFアドベンチャー。
バック・トゥ・ザ・フューチャー
BACK TO THE FUTURE
1985
アメリカ
116分
カラー
<<解説>>
「面白い映画といえば?」と尋ねられたれたとき、映画マニアでもそうでもなくても、まずその候補に必ず挙げるだろうと思われる、20世紀を代表する娯楽作の一つ。
物語の随所に張られた伏線と、その伏線が次々と解決されていく小気味よさ。その伏線の連鎖にしたがってストーリーが軽快に進んでいくという快感。とにかく、ストーリー上のギミックの楽しさが堪能できる作品だ。「タイムトラベルが出来たとしたら」という人類の夢をトコトン見せていくという痛快さは、タイムトラベルものの決定版と言っても良く、タイムトラベルの不可能性について論じられたホーキング博士の有名な論文「時間順序保護仮説」にも(ちょこっと)引用されているほど。
コメディ部分に関して言えば、(当時の)今時の若者を演じたマイケル・J・フォックスとおかしな科学者をオーバーに演じたクリストファー・ロイドの掛け合いが最高に笑わせてくれる。このコンビなしでは、おそらく本作は成り立たなかっただろう。両親の青春ロマンスも良いが、やはり時空を越えた二人の友情物語が印象的で、この作品の大きな魅力のひとつとなっている。また、フォックス以外の主要人物のほとんどが、過去と未来のそれぞれの姿を特殊メイクを駆使して二役で演じているのも楽しい。ドクを演じたロイドはそれまでほとんど無名だったため、当時、実年齢も年配だと思って観ていた人も多かったようだ。
嵐の時計台でのクライマックスは、スリル満点の名場面である。無駄なカットが一つとしてない上に、カットとスコア(背景音楽)を見事にシンクロさせたところは、サスペンスの金字塔『北北西に進路を取れ』のクライマックスを彷彿とさせる。最近の作品は、クライマックスでも既成の曲をミュージックビデオのように垂れ流してしまうが、ゼメキスはスコアを自由に操れることの出来る最後の監督なのかもしれない。
脚本にしても音楽にしても芝居にしても優れていた作品であるが、実は新しいことは何もやっていない。よく、映画は脚本が大事だと言われているが、脚本を堪能したいなら小説を読めばよい。あるいは、芝居を堪能したいなら演劇を観ればよいのである。キューブリックやスピルバーグの作品を観れば分かる通り、映画でもっとも大切なのは、脚本でも芝居でもなく、様々なファクターに調和をもたせる優れた演出なのである。先の二人の巨匠の映画は、たまに演出に鼻につく場合があるが、本作の監督であるゼメキスは少し違っているようだ。職人に徹した彼は、芸術を衒ったような色気を見せず、常に観客の立場に立ち、的確と思われる演出を心がけているようだ。「あたりまえのことをあたりまえに撮る」という、その「透明な演出」こそ、ゼメキスが技巧派と呼ばれる所以なのだろう。
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