ナチスドイツの暗号システム“エニグマ”を確保する作戦に向かったアメリカ海軍兵士たち。
だが、予期せぬトラブルにより彼らはナチスドイツの誇る潜水艦“Uボート”に乗り込むことに。
戦略サスペンス・アクション。

U−571

U-571

2000  フランス/アメリカ

116分  カラー



<<解説>>

潜水艦を舞台とした戦争映画は、密室というその特徴から戦闘の緊迫感や乗組員たちの人間ドラマを描くのに適しており、『眼下の敵』、『レッド・オクトーバーを追え!』、『クリムゾン・タイド』などの傑作、名作が数多く作られている。“潜水艦もの”は戦争映画の中でも一系譜をなすほど人気があり、その中でも金字塔と言えるのが、旧ドイツが製作した『Uボート』だろう。そして、本作は、その『Uボート』にオマージュを捧げたような作品である。Uボートとは、言わずもなが、旧ナチス・ドイツの誇った潜水艦の名艦であるが、アメリカ映画としては、真っ向からドイツの潜水艦の活躍を描くわけにはいかない。しかし、本作では、「アメリカ軍兵士がやむを得ずUボートに乗ることになってしまう」というシチュエーションを用意することで、その問題を解決している。
突然、特別任務を命じられたアメリカ海軍兵士たち。彼らは無事にエニグマ暗号機をUボートから強奪するが、予想外のアクシデントの連続で窮地に追い込まれていく――いかにして、敵に悟られるずにエニグマを守り切るか、というサスペンスにハラハラさせられ、最後まで目が離せない怒涛の展開が見ものだ。作品の欠点を挙げるなら、はじめの設定からして、素人目にもディテールの荒さや強引な展開は否めず、戦争映画としてのクオリティに疑問がある。だが、その欠点も、モストウ監督が前作『ブレーキ・ダウン』でも見せた疾走感のストーリーでカバーされている。
“潜水艦もの”と言えば、もちろん、SFXを駆使した海戦シーンも大きな見どころのひとつだろう。本作は戦闘シーンが少なく、相手はわずか二艦のみであるが、戦闘の量や派手さよりも、一戦一戦に集中して描いている点で印象に残る。中盤のUボート対Uボートという夢の対決や、クライマックスの駆逐艦との一騎打など、ここでもモストウ監督の手腕が発揮され、絶対不利の状況での戦いの緊張感は尋常ではない。やはり戦争映画以前に、テンポのよい娯楽サスペンス・アクションとして楽しみたい作品だ。
昨今の戦争映画は、『スターリングラード』や『パール・ハーバー』に代表されるよう、女性客を意識したかのようにロマンス的な要素を盛り込んだもの多かったが、本作は登場人物が男だけで、色恋沙汰も一切なしという久々に硬派な作品となった。しかし、男所帯とはいっても、男臭い精神論の入った骨太な演出ではなく、現代的なスマートな演出をとっているので、男性だけでなく女性にもおすすめ。上官に扮したパクストン、カイテル、また、俳優としての出演が話題となったボン・ジョヴィなど、男っぽい登場人物を前半で舞台から退出させ、後半からは、比較的“やさ男”と言えるマコノヒーが艦の指揮、および、ストーリーを牽引していく。件のアクシデントで、突然、船長の任に就くことになったマコノヒー演じる将校の葛藤と成長がドラマの軸となっているが、下士官との確執は当然あるものの、おおむね仲間は協力的で、はじめから不和より強調を描いているところが興味深い。また、「全体を守るために個人の犠牲を払えるか」という『プライベート・ライアン』と同様の戦争論的テーマが現れている部分も見逃せない。



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