宇宙からやってきた超人パワーのヒーロー“スーパーマン”の活躍をファンタスティックに描く。
ジェリー・シーゲル&ジョー・シャスター原作コミックの映画化。
スーパーマン
ディレクターズカット版
SUPERMAN
2000
イギリス
151分
カラー
日本劇場未公開
<<解説>>
ともすればチープになりかねないアメコミの荒唐無稽な世界を、ドナー監督が大人も楽しめるファンタジーとして映像化した傑作。コミック原作ものにして、自らの作家性を打ち出してみせたり、ブランドやハックマンなどの有名スターを起用するなどといった試みは、バートン版「バットマン」シリーズなど後の同種の作品に先駆けている。「ディレクターズカット版」は1978年公開版に8分未公開シーンを追加したもの。
本作の最大の課題は、銀河の彼方の惑星からやって来たヒーローという絵空事を、大人の観客にどのように納得させるか、ということだったと思われる。超人的なヒーローを主人公にし、彼の活躍を主観的に描くということは無謀のようではあるが、主人公の内面や成長を丁寧に描くことで、一人の人間(?)としての主人公に感情移入させることに成功している。1940年代に主人公が地球にやってきてから、60年代に過ごした青春の日々、そして、ヒーローとして目覚める70年代までの30年間を描く映画の前半は、ノスタルジックな心地良さがあり、同じ時間を過ごした当時の大人の心をガッチリ掴んだことは想像に難くない。
前半の青春ドラマのパートが必然的とは言え、肝心のスーパーマン登場までの焦らしもクニいもので、トレードマークの青タイツに赤マント姿が拝めるのは上映開始からから50分。劇的な活躍が見られるまでは、さらに十数分待たなければならない。ここから主人公は、2004年に惜しくも他界したクリストファー・リーヴが演じている。「ゴッドファーザー」シリーズのマリオ・プーゾによる原案・脚本も素晴らしいが、この最高のキャストなしでは本作の成功はありえなかっただろう。
満を持して登場するリーブのスーパーマンは、アメコミの派手なイメージとは対極にある繊細かつ華麗な動きを見せる。アメコミの芝居が歌舞伎であるとすれば、リーヴのそれはまさにバレエ。ヒラリと宙に舞い上がる様は、「実生活でも空を飛んでいるのでは」と思ってしまうほどに自然だ。食器を片付けるかのような気軽さで、時にはかっこよく、時にはユーモラスに人間の危機を次々と救っていくスーパーマンの涼しい顔が印象的。だが、圧倒的な力への過信も一つのテーマになってていて、愛するヒロインを救うためにはじめて必死の形相を見せるクライマックスはカタルシスに溢れている。
ハックマン演じるルーサーのずる賢さは、スーパーマンの敵役として過不足はないが、孤独なヒーローを描くために不可欠なもう一つの存在は、やはり彼の心の支えとなるヒロインだろう。本作のヒロイン、ロイスは、何も出来ない弱い存在というありがちなものではなく、アグレッシブな性格の持ち主で、超人パワーを持つスーパーマンでさえタジタジなのが面白い。
シリーズは現在までに4作ので作られていて、2006年には新作『スーパーマン リターンズ』が公開。
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