2065年、隕石と共にやってきた謎の生命体“ファントム”の脅威により、
人類は滅亡の危機に瀕していた。
人気RPG「ファイナルファンタジー」のスタッフがフルCGアニメーションで描くSF映画。

FINAL FANTASY
ファイナルファンタジー

FINAL FANTASY
THE SPIRITS WITHIN

2001  アメリカ/日本

106分  カラー



<<解説>>

言わずと知れた人気RPGシリーズ「ファイナルファンタジー」を、世に送り出したスクエアと坂口博信氏が、ハリウッドで巨費を投じて製作したフルCGアニメーション。CGアニメは、すでに「トイ・ストーリー」などがヒットして定着しつつあったが、リアルな造型や表現を追及した長編作品としては世界初。映画の内容は、ゲームとほとんど関係もなかったものの、人物のシミや毛穴まで描きこんだことなど、技術面で話題となり、アメリカ公開の後、本国日本でも公開された。ところが、フタを開けてみれば、観客の総スカンを喰らってしまい、結局、赤字を抱えたまま映画事業から早々撤退するという惨事を招いた。そして現在、製作者も自ら認める失敗作というところで、評価が固まっている。
CG可能性を見せつけたいという野心が先行してしまい、映画としての魅力がないことは、製作者も当然、気付いていたはずだが、ゲームのユーザが観に来てくれるだろう、という甘えがあったのかもしれない。しかし、「ゲームのシリーズでも、ムービー部分がユーザにとってけっしてありがたいものではなかったこと」や「ゲームやアニメのファンを取り込むだけの“萌え”要素が無かったこと」を挙げてみれば、マーケティングの段階から見当違いをしていたことは明白だろう。しかし、ゲームユーザのような特定の観客に頼らず、ピクサーやドリームワークスのように、立て続けにヒットをとばしているCGアニメもある。それらの一連の作品を観れば分かるように、CGアニメの醍醐味とは、リアルな質感なものがリアルでない動きをする快感にあるのではないだろうか。少なくとも、CGアニメに求められているのは、完璧なリアリティではない。「CGで描かれたクラッシュシーンと、実写のクラッシュシーンのどちらが観たいか?」と、問うまでもないだろう。
しかし、本作はあえて、ピクサーやドリームワークスとは正反対の方向を目指してしまった。技術的には、皮膚の表現が話題になっていたが、人体を骨格から完璧に再現しているのは、感心を通り越して恐ろしくもある。特に、人体で最も複雑な指の表現の豊かさを見れば、その精巧さは一目瞭然だ。これが本作の最大のウリだったが、最大の敗因でもあったも事実で、結果論から言えば、努力はまったくの不毛ではあった。しかし、ツールとしてのCGの意味を実践的に問い直した実験的な作品として、本作を評価してもいいかもしれない。注目すべきは、あらゆるカットにおいてCGを使用する必然性がなく、完全に実写をCGに置き換えてしまった点だ。後は、伝統的なハリウッドの手法で撮られている。つまりこれは、計らずも、映画界で危惧されていた“俳優不要論”に、新たな一石を投じてしまったのである。本作は、確かにけっして面白い作品ではない。しかし、未来のCGアニメ、ひいては映画作品全体の可能性をはかる上で、目撃すべき重要な作品かもしれない。



ストーリーはこちら