愛人の連れてきた隠し子たちを、妻に唆されて始末しようする男の姿を描く、
松本清張原作のドラマ。

疑惑

1978 日本

110分  カラー



<<解説>>

実話を基にした小説の映画化であり、野村芳太郎監督、松本清張原作のコンビとしては『砂の器』に続く五作目。犬や猫のように子供の始末を命じる妻に弱腰で従う夫の悲哀と、そんな苛烈な状況の中で親子の絆を描いてみせる異色のドラマ。ホラー映画のような鬼妻を演じた岩下志麻は、彼女のキャラクターを確立する端緒になった。 ラストの長男の言動には、正反対の二つの解釈の余地があるが、監督と脚本家の間でも意見が割れているので正解というものはない。いずれにせよ父親は救われないことには変わりがない。



<<ストーリー>>

夫婦で小さい印刷会社を営んでいた宗吉は、愛人が家に置き去りにしていった三人の隠し子の世話をすることになった。ある日、末っ子の庄二が衰弱死した。宗吉は、庄二の死に妻のお梅が関わっていたことに気付いたが、負い目もあって黙っていた。
庄二の死をきっかけに、お梅は他の子共たちの始末を唆すようになった。お梅に後押しされるように、宗吉は二番目の良子を街中に置き去りして逃げた。そして、今度は長男の利一を殺すよう、お梅はそれとなく宗吉に言った。だが、賢い利一はお梅の考えを見透かしているようだった……。