夫殺しの疑いをかけられた妻と、彼女の弁護を引き受けることになった女性弁護士。
二人の確執と息詰まる法廷闘争が交錯する、松本清張原作のドラマ。
疑惑
1982
日本
127分
カラー
<<解説>>
野村芳太郎による松本清張作品の映画化としては、『わるいやつら』に続く七作目。夫の保険金殺人の疑惑を持たれた妻に桃井かおり。その妻の弁護を請け負う有能女性弁護士に岩下志麻。正反対の性格と人生観を持つ二人が、反目し合いながらも法廷では一心同体となって闘う法廷もの。ねちねちと弁護士や承認を攻撃する桃井も怖いが、証人の子共を脅す岩下は迫力では負けない。絶対に敵には回したくない二人の丁々発止と、二転三転するがサスペンスが見どころ。判決はあくまで法的な調停であり、心証はどうにも動かすことはできないという、当たり前だが忘れがちな真理を、エンターテインメントとして提示した秀作。
<<ストーリー>>
会社社長の白河福太郎とその妻・球磨子の乗った車が埠頭から海へ転落。福太郎が死に、球磨子だけが助かった。球磨子には前科が四つもあり、その上、夫に三億もの保険金をかけていたため、警察は球磨子に殺人容疑をかけた。マスコミも球磨子を悪女として書きたてた。そして、球磨子は確たる物証もないままも状況だけで逮捕されることに。
球磨子は、福太郎の顧問弁護士に弁護を依頼しようとするが、圧倒的に不利な立場におかれることが分かっているため、辞退されてしまった。弁護士にも見放された球磨子のもとに、国選弁護人として女性弁護士の佐原律子が派遣されてきた。律子は堅実で仕事一筋の弁護士。離婚した前夫・片岡との間にひとり娘のあやこがいた。そんな律子にとって、ホステス上がりから玉の輿に乗った球磨子はまるで違う人種だった。
球磨子の裁判が始まるが、彼女を色眼鏡で見る証人たちは、彼女にとって不利な材料にしかならない証言をするばかり。さらに、球磨子のヒモの豊崎にいたっては、彼女が殺人計画を練っていたと証言するのだった……。