アメリカ海軍の爆撃機A−16の若いパイロットたちの
激化するベトナム戦争における戦いを描く戦争アクション。

イントルーダー
怒りの翼

FLIGHT OF THE INTRUDER

1990  アメリカ

90分  カラー



<<解説>>

ジョン・ミリアム監督作。『若き勇者たち』(1984)、『戦場』(1989)と三連続で戦争映画が続いた。劇場公開向けの監督作としては現時点(2022年)で最後の作品となる。
『若き勇者たち』の架空の戦争、『戦場』の太平洋戦争に続き、本作はベトナム戦争が題材であり、1973年のパリ和平協定から一転して北爆が再開される局面を背景にしている。戦友を戦場で失ったA−16パイロットの苦悩とその克服を、SFXを駆使したスピード感のある空中戦闘シーンの中に描いていく。主人公は血気盛んな若者であり、『若き勇者たち』のような青春映画の要素もある。軍の全面協力のもと何種もの戦闘機の実機を借りて撮影されているため、ミリタリー・ファンからも注目されている。
九十年代に入って進んだベトナム戦争の記憶の風化に伴い七十年代の当時の厭戦気分が薄れ、かつ、湾岸戦争という情勢もあったせいか、戦争に肯定的で好戦的である。戦場で死ぬことの不条理に苦しんだり、仲間の復讐に逸って諌められたりする場面などは、反戦の訴えというより、むしろ戦闘への動機付けと言えよう。「ベトナム戦争もの=反戦もの」という公式からすると異色の作品とも言えるが、そもそも「ベトナム戦争もの」とみなせるかどうかは疑問。和平協定破棄という史実を使った急展開は上手いが、ベトナム戦争を描きたかったわけではなく、本質はヒーロー・アクション映画である。



<<ストーリー>>

ベトナム戦争の後期、アメリカ海軍の爆撃機A−16“イントルーダー”の若きパイロット、ジェイク・グラフトン中尉は、戦闘中に相棒のモーグを失った。彼はなぜ死ななければならなかったのか? ジェイクが募る怒りと悲しみのやり場を求めていたとき、新任のコール少佐からハノイのミサイル基地の情報を聞き、基地への爆撃を主張。コールはジェイクの復讐心を察し、時期尚早だと落ち着かせるが、実は自身もまたかつて戦友を失った経験を持つことを打ち明けた。
こうして、ジェイクとコールは二人だけで密かに爆撃計画を立て、軍の帰還命令を背くかっこうでイントルーダーによるハノイへの攻撃を実行に移すが、折しも北ベトナムとの和平交渉前夜だった……。