地球連邦とジオン公国の決戦の舞台は宇宙へ。
ニュータイプに目覚めた少年たちとシャアとの決着、そして、ザビ家への復讐の行方は?
劇場版アニメ三部作の完結編。

機動戦士ガンダムV
めぐりあい宇宙(そら) 編


MOBILE SUIT GUNDAM

1982  日本

141分  カラー



<<解説>>

『機動戦士ガンダムU 哀 戦士 編』の続編で三部作の最終作となる作品。第十六話から第三十二話から最終話である第四十三話までの再構成である。ただし、第三十九話は割愛されている。
前作は主人公アムロの乗る戦艦ホワイトベースが宇宙に飛び発つ場面がラストシーンであったが、本作はその続きとして宇宙を舞台に移し、地球連邦によるジオンの二つの宇宙要塞の攻略作戦から終戦までを一気に描く。大きな戦況に加えて、ザビ家の内紛とシャアの復讐という政治的ドラマも収束に向かっていき、物語は前二作からさらに複雑な様相を呈してくる。前二作で仄めかされてた“ニュータイプ”についても、登場人物が宇宙に出てることによって能力の開化が著しくなる。決定的なのは高いニュータイプ能力をララァの登場であり、彼女の登場によりニュータイプ同士の通じ合いという物語の確信に迫っていく。サイケデリックなイメージで描かれた精神世界は、超能力SF史に残る斬新な表現であろう。登場人物の様々な想いが交錯する見ごたえのある内容は完結編にふさわしいが、打ち切りが決定してから大急ぎで物語を終わらせようとしたためか、終盤の四十分は非常にめまぐるしい展開となっている。素材とした話数は前作とほぼ同じだが、やや詰め込み過ぎた印象があり、少しでもよそ見をしていたら話が分からなくなると言っても大げさではない。
予定していた話数がきちんと消化できていたとしたら、本来どのような展開を構想していたかは、製作者が語りもしているし、ファンによる臆測も絶えることがない。しかし、打ち切りという不可抗力よによる偶然の産物としての、終盤のドタバタ感と有耶無耶感には妙なリアリティがある。物語の最重要人物であったと思われるララァの、不完全燃焼の退場させたもったいなさも、結果としては潔かった。三角関係をくどくどと描かなかったことがかえって、アムロとシャアの因縁として神聖化されることになったのである。少年兵たちの漂泊の着地点も見出すことができなかった。彼らの戦いが戦況に大きな影響を与えることがないまま、ジオンの自滅によって終戦を迎える。結局、彼らはただ翻弄されただけの存在だったのだろうか、そして、彼らにとってこの戦争が何だったのか、という問いかけだけが残される。主人公が仲間もとに帰っていくというラストシーンは大団円からは程遠い。しかし、このなんということもないラストシーンだからそこ味わい深いものになった。本作は、便宜的には「機動戦士ガンダム」という物語の完結編だが、本来の意味では未完なのだろう。物語には結末をつけるに越したことはないが、結末が存在しない、あるいは、不完全だかとら言って、必ずしも作品の価値が下げるということはにはらなない。実際、世には未完の名作の枚挙にはいとまがなく、鑑賞者の想像をかきたてるという未完ならではの魅力も確かにある。本作が構想通りに完結していたとしたら、もしかしたら評価が現在より高くなっていたかもしれない。しかし、数多の続編や派生作が受けいれられているということもなかったかもしない。



<<ストーリー>>

ジャブローから宇宙へ飛び立ったホワイトベースは、月へ向かうように見せかけるコースをとった。ホワイトベースが後を追ってくる一隻のジオンの戦艦を捉えたとき、セイラはシャアが来ることを感じとった。一方、シャアはホワイトベースの動きを見て早くも囮であることに気付くが、後退すれば背後から攻撃されることは必至。付近を航行中のかつての副官ドレン大尉のキャメル艦隊に、ホワイトベースを前方からおさえることを依頼した。ホワイトベースは、キャメル艦隊から出撃した宇宙戦用モビルスーツ“リック・ドム”の編隊と交戦を開始。戦闘の最中、ドレンは部下からガンダムを見失ったという報告を受けて焦った。次の瞬間、ドレンの乗る旗艦ムサイは頭上から猛スピードで迫る熱源を捉えた。その熱源がガンダムだと気付いた時には時既に遅く、ドレンのムサイは撃破された。ムサイの死角をついたアムロの巧みな戦術だった。
かつてサイド1のあった空域にはジオンの攻撃拠点である要塞“ソロモン”があり、ドルズ・ザビ中将が守っていた。月の裏側の都市“グラナダ”には宇宙起動軍基地があり、こちらはキシリア・ザビ少将が守っていた。ドルズとキシリアの間には姉弟の激しい確執があり、ドズルは罷免したシャアの無能を、彼を使っているキシリアにどうにかして教えてやりたいと考えていた。ホワイトベースはソロモンとグラナダのどちらにも向かわず、次の作戦までの陽動のため、中立国であるサイド6に直行することになった。その頃、他の連邦軍の戦力はルナツーに集結しつつあった。ジオン軍は連邦軍の目的を読めないため、多くの戦力を割くことことが出来ず、ドルズ麾下のコンスコン少将の部隊だけを動かすことにした。
サイド6に着いたホワイトベースは、領空内での戦闘行為は禁じられているため、攻撃用の装備のすべてを封印された。入国審査のために艦に迎えられた検札官のカムラン・ブルームはミライの婚約者であり、ブリッジで発見した彼女との再会を喜んだ。戦争が始まってから消息の絶っていたミライを人を使ってずっと探していたのだという。だが、ミライは、結婚は親同士の決めたであることや彼が戦争を他人事としか思っていないことが不満であり、カムランを冷たくあしらった。二人の仲裁に入ったのは、ジャブローからホワイトベースの仲間に加わったスレッガー中尉だった。ブライトはミライとカムランの関係が気になり探りを入れてみたりもしたが、それ以上踏み込むことができず、ミライを失望させてしまうのだった。一方、休暇をコロニーに上陸したアムロは、行方不明になっていた父テム・レイの町中で姿を発見。父は元気そうだったが、サイド7で戦闘に巻き込まれて宇宙空間に投げ出さたときに酸素欠乏症になったようで、かつての聡明さは失なわれていた。父は別れた直後、アムロはショックのあまり泣き崩れるのだった。
ある日、アムロは雨宿りで駆け込んだ湖畔のコテージで少女ララァ・スンと出会い、彼女のまとう不思議な雰囲気に惹きつけられた。サイド6を離れる最後の日、父に別れを告げてホワイトベースに戻る途中、乗っていたバギーの車輪をぬかるみにとられて立ち往生していたところをシャアに助けられた。モビルスーツ越しでしか対峙することがなかったため、シャアはアムロが誰なのか気付いていないようだったが、アムロは相手が赤い彗星のシャアであることに直観で気付いた。そして、シャアの車を運転していたのがララァであることに驚いたアムロは、彼女に教えるつもりで名乗るのだった。その頃、ホワイトベースでは出航の準備がすすめられていたが、既にコンスコン隊に待ち伏せられていることが分った。カムランは空域を出るまでの水先案内を申し出た。いざという時はミライのために盾になろうという最後のこころづくしであった。ミライはカムランの申し出を突っぱねるも、スレッガーの取り成しで受け入れることに。領空侵犯も辞さないコンスコンはサイド6を出たホワイトベースをリック・ドムで挑発。カムランは危険を感じながらも領空の境界ぎりぎりまで進もうとするが、彼もブライトと同じ不器用な男であり、ミライの説得に折れて泣く泣く退くのだった。ホワイトベースとコンスコン隊の交戦が始まった。テレビ中継で戦闘の模様をシャアと一緒に視ていたララァは、ガンダムが勝つことを直観。ララァはジオンのフラガナン博士のニュータイプ研究機関に所属する兵士だったのだ。
ギレン・ザビは連邦軍がソロモンに速攻をかけている確率が高いと考えていた。キシリアはグラナダからニュータイプの増援を出す事を兄に約束。一方、姉に対抗するドズルは、もう一つの宇宙要塞“ア・バオア・クー”の戦力を振り向けるべきだと兄に迫った。その頃、ホワイトベースはルナツーの司令ワッケイン少佐の隊と合流するため、テキサス・コロニー付近に停泊していた。牧畜と観光のために作られたこのコロニーは、戦争で放棄されて砂漠化し人も住んでいなかったが、今そこには密かにニュータイプ用の新型モビルスーツ“エルメス”のテストを行おうとするシャアとララァの姿があった。アムロがガンダムでコロニー内部の偵察に向かっていた頃、ララァは何かが心に触れたように感じた。新型モビルスーツ“ゲルググ”で偵察に向かったシャアは、ガンダムと遭遇して交戦。戦いの最中、アムロとララァは互いに感じ合うが、相手が誰なのかには気付けなかった。
ダミーの爆破でガンダムを陽動し、その隙にゲルググを降りたシャアは、通信の途絶えたアムロの捜索にやって来たセイラと三度(みたび)遭遇した。セイラ=アルテイシアはザビ家への復讐という兄の目的を知っていたが、地球連邦の敵になることは筋違いだとシャア=キャスバルを責めた。二人は育ての親ジンバ・ラルから父ジオン・ダイクンを暗殺したデギン・ザビ公王だと聞かされていた。ジオン・ダイクンは宇宙の民をニュータイプのエリートとし、宇宙移民者の独立主権を主張していた。だが、デギンはジオン・ダイクンの主張を、エリートであるから地球に従う必要はないという論法にすり替えたのだった。おそらく人の革新は既に始まってたのだろう。それを理解できなオールドタイプは殲滅すべきだというのが、キャスバルの考えだった。アルテイシアは、オールドタイプはニュータイプの土壌であろうし、古きものすべてを悪しきものとする兄には同意できなかった。ましてや、ニュータイプによる独善的な世界を作ろうなどどは。そのとき、キャスバルはアルテイシアからアムロの名を聞き、サイド6で会った少年がガンダムのパイロットであることを知った。二人の会話をブリッジで聴いていたブライトはセイラに、彼女宛に届いたトランクを示し、彼女に説明を求めた。セイラはトランクの中身が金塊であること、そして、差出人がシャアであることを打ち明けた。
連邦軍によるソロモン攻略作戦が開始された。艦隊から砲撃とモビルスーツ隊の進撃は総攻撃の様相を呈していたが、それはサイド1の残骸に潜んだティアンム中将の艦隊が、ミラーを配置するための時間稼ぎだった。太陽光を集めて熱線を浴びせるソーラー・システムは連邦軍の最終兵器であった。ドズルはティアンムの動きに気付くが、キシリアへ援軍を求めることは彼のプライドにかかわることだった。ドズルが手を拱いているうちにミラーを配置が完了。ソーラー・システムの熱線の威力は絶大でたちまちソロモンの右翼を焼き尽くした。
ソロモン攻略戦の最中、スレッガーの乗っていた戦闘機“コア・ブースター”が被弾。その時、ブライトはミライがはげしく動揺していることに気付くと、「君のことを見守るくらいはできる」と言い、一時帰還したスレッガーのもとに行かせた。スレッガーは自分の無事を知って涙を流すミライを見て戸惑うが、「少尉の好意に受けられる男じゃない」と言って、母親の形見の指輪を彼女に渡した。一方その頃、ドズルのもとにグラナダからキシリアの援軍が来ることになったが、あまりにも遅すぎた。ソロモンが堕ちると確信したドズルは妻子を先に脱出させると、二三個師団ほどの戦力誇るモビルアーマー“ビグ・ザム”で出撃。強力なビーム砲で連邦軍のモビルスーツを焼き払ったドズルは、副操縦士を脱出させると自らビグ・ザムを操縦して残った主力艦隊へ立ち向った。スレッガーはビグ・ザムの特攻を阻止しようとしてコア・ブースターで追いすがるが、反撃に遭い戦死。アムロはガンダムでビグ・ザムの前に回り込み、ビームサーベルを突き立てた。その時、アムロはドズルの背後に巨大な影を感じた。ビグ・ザムが撃破され、ソロモンも陥落した。作戦は連邦軍の勝利だったが、ホワイトベースはスレッガーの死に打ち沈むのだった……。