アメリカとメキシコの国境を舞台に、国境警備の腐敗を描いた社会派サスペンス。

ボーダー

THE BORDER

1982  アメリカ

108分  カラー



<<解説>>

ジャック・ニコルソン主演のサスペンス。メキシコと国境を接するテキサス州の街で、稼ぎを目当てに国境警備の仕事に就つことになった男に扮する。元々ロサンゼルスで警官をやっていた主人公は、メキシコ人のことを違法動労検挙のノルマをこなすための対象ぐらいにしか見ていなかったが、不法入局の現場を目の当たりにすることで、彼らがどんな惨状にあり、どんな想いを抱えてアメリカをめざすのかを知り衝撃を受ける。また、主人公は、不法な越境を取り締まる立場にある同僚たちが、裏で不法入国の手引をしているという腐敗も知ることに。そして、主人公もまた、金のために不法入国者の運び屋に手を染めていく。
現代においてもなお進行形である不法移民の問題を、現場主義で捉えた社会派の脚本。境界のこちら側向こう側。どの当事者の立場に立つかで景色が一変する状況の中、「何が正義なのか」、「自分は何を成さねばならないか」について、葛藤する主人公の姿を描く。葛藤や苦悩を描くは言っても、その演出は極めてドライかつ非情であることが特徴。砂ぼみり舞う乾いた大地という風景が、よりそういう印象を与える。脚本が佳作ではあるため、前半を社会派ドラマとして楽しんでいると、後半の活劇の過剰さに虚をつかれる。ここは、ヒーロー・アクションとして、気持ちを切り替えて楽しみたいところ。
前年の『シャイニング』の小説家役が強烈過ぎて、狂気の悪役のイメージが定着してしまったニコルソンが、本作の主人公のような人間的な命題を抱えている役ということに、違和感は否めない。配役で損をしている作品。



<<ストーリー>>

ロサンゼルスの警官チャーリーは、メキシコ人を使っている工場に狙いを定め、違法労働者を検挙するという日々を送っていた。夫の稼ぎに満足していない浪費家の妻マーシーは、メキシコとの国境の町エルパソに住む友人から、国境警備の方が稼ぎになることを知った。マーシーから説得されたチャーリーは、エルパソに引っ越し、マーシーの友人の夫のキャットと同じ、国境パトロールの仕事に就つことになった。
チャーリーは国境に来てはじめて、故郷での窮状に耐えかねたメキシコ人たちが、必死の思いでアメリカへの不法入国をしていることを知った。そんなある日、チャーリーはメキシコ側で、アメリカ入国の機会を狙うマリアとフアンの姉弟と出会った。マリアは赤ん坊を抱えていた。
また別のある夜、チャーリーは、国境界隈のことを色々と案内してくれた男が死体になっているのを見つけた。殺したのはキャットとその取り巻きであり、彼らは国境警備をする裏で、不法入国の運び屋の仕事にも加担していることを知った。チャーリーは金の為とわりきって、キャットの仲間に入れてもらうが、キャットたちが対立する運び屋を次々殺していることには我慢がならならず、日増しに憤懣を募らせていった……。