皇帝ナポレオン率いる仏軍とウェリントン卿率いる英蘭およびプロイセン連合軍の
ワーテルローの地での闘いを描いた歴史スペクタクル。
ワーテルロー
WATERLOO
1970
イタリア/ソビエト連邦/アメリカ
123分
カラー
<<解説>>
ナポレオン最後の闘いであり、近代ヨーロッパの転換点のひとつとなったワーテルローの闘いを、豪華キャストと壮大なスケールで描く。監督はソ連のセルゲーイ・ボンダルチューク。主演は、ロッド・スタイガー(ナポレオン役)とクリストファー・プラマー(ウェリントン役)。オーソン・ウェルズがルイ十八世役で出演。
本編の冒頭は、スタイガーが迫真の演技を見せ、ナポレオンの剛胆さを印象付ける。歴史大作の予感させ、いやがうえにも期待が高まる始まりである。ナポレオンのフランスへの帰還の行程をかいつまんで語った後、皇帝に返り咲いたナポレオンの動向に色めき立つ半フランス勢らの表情をテンポよく見せていく。そして、舞台は決戦の地ベルギーのワーテルローへ。あとはフランス軍と反フランス同盟軍の激戦がひたすらにじっくりと活写かれていく。全体の七割ほどが戦闘シーンということからも、本作は戦闘それ自体を描くことに非常な精力が注がれていることが分かる。
本作で題材とされる戦争は、戦車や飛行機が飛び交う現代的な殺戮戦ではなく、まだ美学が信じられていた中世の戦争の雰囲気が色濃く残る戦争である。血なまぐさいドラマとしての戦争でなく、チェス的な戦略ゲームとして戦争が描かれていて、激しい戦闘はシーンもさることながら、どの軍がどこに動き、どういった攻撃をしかけた、といった戦況の事細い説明にも力が入れられているところが、本作の特徴となっている。
日本に戦国マニアがいるように、ヨーロッパにも趣味や教養として戦史を研究している紳士も多いようで、そういう観客にとっては、淡々とした戦況の詳述は大いにアピールするものなのかもしれない。しかし、日本の観客には、いくら世界史を学んでいたとしても、各将軍の立場や戦場の位置関係を正確に把握できる人は少ないだろう。制作者の意図した面白さが伝わっていないのではないか、というもどかしさはあるが、万単位のエキストラを動員して再現した戦闘シーンには迫力があるので、戦況がよく分からなくても十分楽しめる作品である。
<<ストーリー>>
戦術家としての手腕と政治的手腕で国民の心をつかみ、フランス皇帝に上り詰めた、ヨーロッパの覇者ナポレオン・ボナパルト。だが、1812年、15年間の勝利の栄光は、ロシア戦役での大敗により、途絶えた。
1813年、オーストリア、ロシア、プロイセン、イギリスの、対仏同盟軍に囲まれたナポレオンは、皇帝から退くことを腹心たちに迫られた。
1814年5月、地中海のエルバ島に流されたナポレオンは、その十ヵ月後、千名たらずの近衛兵を率いて島脱出した。
ルイ十八世は、かつてナポレオンの腹心であったネイ将軍に命じて、ナポレオンを水際で食い止めようとした。だが、兵士たちは、相手がナポレオンだと知ると、戦意を失い、迎え撃つどころか、彼を歓迎した。
こうして、なんなくパリに入ったナポレオンは、1815年3月1日、チュイルリー宮殿で民衆の熱狂を受けながら、皇帝の座に返り咲いたのだった。一方、この事態を受けた対仏同盟軍は、ナポレオン打倒のために結束を高め、ベルギーのワーテルローへ隊を進めた。
ブリュッセルの社交界は、ナポレオンの動向の噂で持ちきりだった。舞踏会に出席していたイギリスのウェリントン卿は、ナポレオンの動きが活発になっていると聞き、前線に取って返した。
対仏同盟軍は、ナポレオン軍に、「明日の一時、ワーテルローで」と伝令を送った。ナポレオンは、戦いの開始に合わせて、砲撃の準備をしようとしたが、降り続いた雨のせいで足場が悪く、思うようにすすまなかった。
かくして、六月十五日、ワーテルローの地で、対仏同盟軍とナポレオン軍、双方合わせ十四万の軍勢が激突する大戦の火蓋が切って落とされたのだった……。