兵士は奔放な女性カルメンとの出会いをきっけかに、荒野の盗賊団へと身を落としていく。
オペラ『カルメン』の舞台をアメリカ西部に置き換えたドラマ。
裏切りの荒野
L'UOMO, L'ORGOGLIO, LA VENDETTA
1967
イタリア/西ドイツ
100分
カラー
<<解説>>
オペラで知られるメリメの小説『カルメン』を翻案した異色のマカロニ・ウエスタン。しかし、マカロニ・ウエスタンとして観始めると、予想外の雰囲気に面食らうことになる。前半は都市が舞台で、西部劇を微塵も感じさせない破滅的な展開の青春ドラマ。まるでヌーベルバーグの映画を観ているようである。後半、舞台が荒野に移ると雰囲気は一変。題名のイメージ通りの西部劇になる。作品が作られた経緯は不明である、さしずめ、西部劇の流行に乗っかるために、ドラマチックな内容で人口に膾炙している『カルメン』を材に採った結果、このような奇妙な作品が生まれたのだろう。
そもそも、本作をマカロニ・ウエスタンと呼んでいいものかということはあるが、マカロニ・ウエスタンの中では芸術点が高い作品である。登場人物の心情を反映するかのように揺れ動くカメラが良い。クライマックスでは主人公の焦りと激情と共に画面かが落ち着かなくなり、次いで波打ち際に倒れ込む主人公を捕えるショットまでの流れも鮮やか。しかし、もっとも強烈な印象を残すのは、クライマックスの直前の長いキス・シーン。糸を引くような熱いキスは映画史でも屈指なのではないだろうか。
<<ストーリー>>
工場の警備を担当する曹長のホセは、同僚と喧嘩騒ぎを起こした工員の貧しい女カルメンを捕えた。だが、ホセはカルメンの美しさに惑わされて彼女を逃がしてしまい、責任をとって格下げになった。
ホセはあるパーティに客として来ていたカルメンと再会し、今度は警察に突き出そうと彼女に迫った。だが、実は自分のことを愛している、と言い出す彼女にまたしても惑わされて、すっかり彼女にのめり込んでしまった。そして、彼女に付きまとううちに、彼女が自分の上司である中尉と交際していることを知ったホセは、頭に血が上って、中尉を殺してしまった。
殺人犯として追われる身となり、行き場を失ったホセは、カルメンが関与している荒野の盗賊の仲間に加わることになった。だが、そこには、カルメンの情夫ガルシアもいた……。