軍事独裁国に逮捕された革命家の救出という極秘任務のために
組織さたれた女囚コマンド部隊の活躍を描くアクション。
地獄の女囚コマンド
HIRED TO KILL
1990
アメリカ
91分
カラー
<<解説>>
セクシーな女囚たちを集めて、壮絶なコマンド・アクションを繰り広げさせるという趣旨のB級作品。女囚たちのリーダーである主演のブライアン・トンプソンと、女囚たちを演じる美人女優たちはほとんど無名だが、黒幕役のジョージ・ケネディ、老革命指導者役のホセ・ファーラー、独裁者のオリヴァー・リードなど、何気に豪華なキャスト。チャック・ノリスの『地獄のコマンド』とは無関係。
一人の傭兵が依頼主の謎の男に呼びつけられ、新しい任務の説明を受けるところから物語が始まる。傭兵の経歴は不明。依頼主との関係やその正体も不明。ともかく、中東あたりにあるらしい小国サイプラから、逮捕されている革命派の指導者を救い出すというのが、今度の仕事の内容。ただし、その国は内務大臣一人に実効支配されていて、少しでも反乱を起こしそうな者を徹底的に暴力で排除しているという。潜入は極めて困難だが、コンピューターが計算によって導き出した作戦によれば、傭兵がファッション・デザイナーに化けて、モデルの女性たちを引き連れて行けば、可能だという。かくして、世界各地の刑務所の中から五人の女囚が選ばれ、厳しい戦闘訓練とモデルの特訓を受けること。
設定が曖昧な上にシチュエーションがマンガ的で説得力はないものの、一応は合理的な説明で、セクシー女囚コマンド部隊が結成される。敵の眼を欺くために、ファッション・モデルとしての撮影シーンがあるのだが、これがなかなかセクシーなシーンになっていて楽しい。とは言え、そういう路線で進んでいくかというとそうではなく、お色気やおふざけは控えめで、後半はしっかりとバトル・アクションを見せる。同時期の似た趣旨の『スパイ・エンジェル グラマー美女軍団』と比べると、これよりかはだいぶ硬派な内容なのである。しかし、そのシリアスさが、かえって珍妙な台詞や場面を際立たせ、観る者の突っ込みを誘うという状態になっている。
<<ストーリー>>
腕利きの傭兵ライアンは、組織の会長トーマスから新しい仕事の依頼を受けた。行く先は小国サイプラ。その国の政府はトーマスの組織が後押ししたものであるが、今や軍部が腐敗して政情は最悪になり、国中に貧困が溢れていた。政府を実質的に支配しているのは、情報防衛局長兼内務大臣で、裏で秘密暗殺隊を動かしているマイケル・バルトス。その男によって、国民に“兄弟”と呼ばれて支持を集めているレジスタンス指導者のペトロス・ラリスが十五年の刑を宣告されていた。バルトスを倒し、ラリスを救出するのがライアンの仕事だった。
彼は七十万ドルの報酬で引き受けることにしたが、トーマスが女たちを一緒に連れて行くことを条件に加えた。無事にサイプラに潜入して仕事を終えるには、その方法が唯一であると、コンピューターがはじきだしたのだという。つまり、ライアンはデザイナーに、女たちはモデルに化け、サイプラで新作のファッション・ショーを開く。軍部を骨抜きにしたところで、向こうの連絡員と協力して、ラリスを救出するという計画だった。トーマスは、ライアンに二人の女性、シーラとダフネを紹介した。シーラはかつて一緒に仕事をした傭兵仲間。ダフネはサイプラの大使館員の娘だが、父親を殺されたことで国への復讐心を持っていた。
ライアンはシーラの案内で世界各地の刑務所を訪ねまわり、今度の仕事にうってつけの強くて美しい女囚たちを集めた。トルコのイスタンブールでは、麻薬の密輸で捕まったという、人一倍はねっかえりなシビー。カリフォルニアのサンクエンティンでは、CIAの殺し屋だったが、組織に不満を持ったために罠にはめられたというジョアンナ。イタリーのサルジニアでは、ソ連の軍人に両親を殺されてから心を閉ざしているナイフの使い手のカトリーナ。皆、仕事が成功すれば、釈放ときれいな経歴を与えることを条件で、ライアンの部下になることを承諾した。
最後の一人は女囚ではなく、プロのファッション・カメラマンのダリア。実は彼女はイスラエル人のテロリストだったが、経歴を消して顔も整形することで、新しい身分を手に入れていた。ライアンは半ば脅迫する形で、彼女の仲間に引き入れたのだった。こうして、六人の美女がライアンのもとに集められた。ライアンは来るべき作戦の本番に向けて、猛烈な戦闘訓練を女たちに課した。また、ファッション・ショーを開くために、モデルとしてのメイクやウォーキングも叩きこんだのだった。
作戦決行のときが来た。ライアンは有名デザインナー、セシル・ソーントンとして、六人の美人モデルたちとサイプラへ入国。ライアンが探すまでもなく、バルトスのほうから会いにきて、世界的デザインナーを歓迎した。バルトスは図々しくも、自分の愛人であるアナをモデルに加えてほしいと打診してきた。正体や計画が知られる危険があったが、ライアンは仕方なく承諾した。
国内の各地で催されたファッションショーは喝采を浴びたが、肝心の連絡員が接触してくる気配がなかった。しびれを切らしたライアンは、バルトス邸で開かれたパーティの席上、人目を忍んで宴席を離れた。そして、ライアンの執務室に侵入して極秘情報を探そうとするが、アナと警備係のルイスに見つかってしまった。実は、アナとルイスこそ、トーマスの連絡員だった。アナはもう一人の連絡員である占い師のタラも紹介。こうして、味方が全員そろった。
アナがバルトスの電話を盗聴して掴んだ情報によると“兄弟”ラリスは、明日どこかの刑務所に向けて移送されるのだという。移送の途中におそらく、使われなくなって荒れ果てた古い軍の塞砦に三、四十人の護衛と共に一泊するはずである。この要塞なら、軍にいた経歴の持つルイスが勝手を詳しく知っているため、襲撃は容易だとアナは考えていた。あとは大量の武器が必要だったが、町と要塞の中間にある山中で革命軍ゲリラのアジトに行けば調達可能だという。
ライアンはバルトスの邸に向かい、モデルの撮影のために鍾乳洞に行きたいとバルトスに頼んだ。もちろんそれはゲリラのアジトを訪ねるための口実である。バルトスは山に行くことを承諾したが、美女たちと旅をしていながら、彼女たちと関係を持たないというライアンのことを奇妙に思い始めていた。バルトスはアナの服を脱がしてみせ、ライアンの様子を伺った。ライアンはあらぬ疑いをかわすため、自分がゲイであることをほのめかし、その証明としてバトルスにキスまでして見せた。これにはさすがのバトルスもひるみ、追い払うかのようにライアンを帰すのだった。
かくして、作戦の準備は整った。ライアンは決行の時と場所を暗号でトーマスに連絡した。脱出用のヘリの手配も要請した。一方、ダリアは、ダフネが人目を忍ぶように公衆電話で、国外の誰かと連絡をとっているのを目撃していた……。