人間の王子に恋をした人魚の娘の愛と冒険を描くアニメーション。
リトル・マーメイド
人魚姫
(
リトル・マーメイド
)
THE LITTLE MERMAID
1989
アメリカ
92分
カラー
<<解説>>
ディズニーの長編アニメーションの28作目。アンデルセンの創作童話「人魚姫」の翻案し、悲恋や叶わぬ恋の代名詞とされる原作のイメージを一新するポップなミュージカルに仕上げた。当時ヒットしたが、その後も人気の高い作品で、テレビシリーズ化後、ビデオで二作の続編が作られている。
当時のディズニーは、ディズニーランドの成功やキャラクターの人気が示すように、一定のブランド力はあったものの、肝心のアニメ作品は低迷を続けていた時代である。本作の前年に公開された27作目『オリバー ニューヨーク子猫ものがたり』なる作品であったことは、ディズニーのコアなファン以外は知らないであろう。それほどの低迷からの起死回生となったのが本作である。
従来のディズニー・アニメのターゲットは子供を中心。しかし、本作は年齢層をひとつ上げてティーン向けに設定。それに伴い、作品のテーマが彼らの最大の関心事である恋愛になったのは必然だが、題材を広く知られている童話に採った。これがディズニー離れした観客を呼び戻すことになったが、童話のアニメ化に意欲的だったウォルト・ディズニーの悲願を果たすことにもなった(童話を原作としたのは、59年公開の『眠れる森の美女』以来である)。
主人公の人魚アリエルは、姿こそファンタジーであるが、その中身は観客と同じ等身大の16歳の女の子。恋と人生に悩みながらも、未来へのポジティブな希望を抱いている。コメディリリーフは、お目付け役の蟹のセバスチャン(コックとの追いかけっこは爆笑もの)に任せ、自身は人間の王子エリックとの恋にまい進。その恋の顛末ははたして……。
本作の成功を受けて、同じ方法論により、『美女と野獣』、『アラジン』という、青年層も視野に入れたクオリティの高い作品を作り、ヒットを連発。その結果、ファンタジー(夢と魔法)に加えて、ロマンスという新たなコンセプトがディズニーに与えられるとともに、年代を超えた支持を得ることになった。もし、本作がなかったなら、ディズニーランドがデートスポットとなることもなかったかもしれない。まさに記念碑的作品である。
<<ストーリー>>
海底世界の王トリトンの娘アリエルは、歌と冒険が大好きな十六歳の人魚。ある日、彼女は、火災で沈没する船から救った人間の王子エリックに恋をしてしまった。トリトンは、人間を野蛮なものと決めつけていて、アリエルとエリックとの恋に大反対。
悩んだアリエルは、魔女のアースラに頼み、自分の美しい声と引き換えに、人間のような足を手に入れた。しかし、三日以内にエリックとキスをしなければ、アリエルはアースラのものになってしまうという。
陸に上がったアリエルは、エリックと出会い、だんだんと彼と良いムードに。ところが、それを見たアースラは、アリエルが口をきけないことをいいことに、アリエルの声を使って、火災から王子を救ったのは自分だと名乗り出た……。