マイアミでストリート・レーサーに転身したブライアンは、
潜入捜査のために麻薬カルテルのボスのカネの運び屋になる。
「ワイルド・スピード」シリーズ第2弾。

ワイルド・スピードX2

2 FAST 2 FURIOUS

2003  アメリカ/ドイツ

107分  カラー



<<解説>>

全作『ワイルド・スピード』は、ヴィン・ディーゼルとポール・ウォーカーのダブル主演でヒット。続編が次々と作られ、P・ウォーカーは残念ながら亡くなってしまったものの、2017年現在までに8作が作られている人気シリーズであり、名実ともにカー・アクション映画の金字塔である。また、アメ車、日本車、欧州車が分け隔てなく登場することも話題に。
全作のヒットを受けての続編となる本作は、主演も引き継いでポール・ウォーカーであるが、V・ディーゼルは出演していない。8作中、彼が出演しない唯一の作品となった。P・ウォーカーのバディ役として、V・ディーゼルの代わりに登場するのは、人気歌手でもあるタイリース・ギブソン。本作だけのゲストかと思われたが、5作目『MEGA MAX』からはレギュラーに。監督は前作から交替し、『シャフト』のジョン・シングルトン。
全作の物語の顛末により、警官だったブライアンは警察を辞職。舞台はロサンゼルスからマイアミに移り、新天地でブライアンは、違法なカリスマ・ストリート・レーサーとなっていた。そんな彼の前に現れたFBI。ブライアンは、これまで罪の免除と見返りに、再び潜入捜査の任務に就くこと。捜査の対象は、麻薬密売カルテルのボス、ベローン。幼馴染のロームや、美人潜入捜査官のモニカと共に、ベローンのマネーロンダリングの証拠をつかむために奮闘する。
冒頭の深夜のストリート・レース、ベローンのドライバーのオーディションのため白昼のレース、そして、クライマックスのFBIと警察との一大チェイス。大がかりにカー・アクションの見せ場が満載である。仕組みが謎な超高速ダーボ、電気系統を無力化するFBIの秘密兵器、などといったSF的な要素もあるが、CGなしを謳ったカー・スタントは迫真である。迫力だけでなく、マイアミの抜けるような青空の下でカラフルなボディの車たちが繰り広げるという色彩の楽しさもある。
マイアミの明るく解放的な風土のため、クールなブライアンを除けば、ノリが良くチャラチャラした感じの登場人物ばかりで、映画の全体もそういう空気に包まれている。ところが、フタを開けてみると、きわめて健全なことに驚かさせる。一昔前で同じ題材の作品を撮ったなら、セックス、ドラック、バイオレンスは外せなかっただろう。しかし、本作にはそういうものの匂いがしないのである。主人公のブライアンにしてから、モニカに気があるのかないのかはっきりしないし、暗い過去は語るくせに影が感じられない。男くささばかりか、人間臭ささのなさ。その他の登場人物たちにしても、キャラクターの色は濃いが、まるでビデオゲームのアバターのような匿名性で人間が見えない。マイアミの日差しで滅菌消毒されたような妙な清潔感が、チャラついた空気を中和している。それは悪く言えば空しさだが、人間が暑苦しくないところが、いまどきである。気のいい仲間たちと遊ぶのは楽しいが、オモい関係は遠慮したいと思うのがSNS時代なのだろう。そういった人間描写の距離感が、シリーズとして長続きする所以なのかもしれない。



<<ストーリー>>

ロスでストリート・レサーのドミニク(ドム)・トレットを逃がしたため、市警をクビになったブライアン・オコナー。彼は今、マイアムでカリスマ的な人気を誇るストリート・レサーになっていた。マイアミの“主”テズが湾岸道路で夜な夜な催すレースに出場したブライアンは、自分に熱い視線を送る美女に気付いた。レースは大方の予想通りブライアンが征し、賭け金はテズと山分けに。ブライアンが例の美女に声をかけたその時、FBIが大挙してやってきた。ブライアンはそのまま逮捕されてしまうのだった。
尋問室でブライアンを待っていたのは、ロスで世話になったビルキンス捜査官。ブライアンの身を確保したのは他でもなく、罪の帳消しの見返りにある捜査へ協力させるためだった。対象は、ドラック密売カルテルの元締め、カーター・ベローンである。何度かガサ入れをしてみたが何も出ないため、税関から捜査の要請が出たのだ。ベローンを追う麻薬捜査官のマーカムは、女性の捜査官をベローンのもとに潜入させていた。ベローンの専属秘書となっている彼女の報告よれば、ベローンは今、ドライバーを集めているのだという。つまり、ブライアンがドライバー候補としてベローンに近づくというわけである。ブライアンは、自分の選んだ相棒と一緒にやることを条件に協力することにした。
ブライアンの相棒とは、幼馴染のローマン(ローム)・ピアースである。彼は車の窃盗で三年の刑期を終えた後、バーストウでレースをしていた。というより、足に発信機を付けられているため町から出られず、ここでレースをするしかなかった。彼は、警官であったブライアンを恨みんでいた。盗難車を隠していたガレージのガサ入れのせいで逮捕されたからだ。そのガサにはブライアンは関わっていなかったが、警察を敵視するローマンにとっては、警官なら誰でも同じだった。そういうわけで、ローマンは自分に会いに来たブライアンに激しく反発。だが、協力すれば発信機を取るというビルキンスとの取引が本当だと知ると、ブライアンの相棒になることにした。
ブライアンとローマンは、さっそくベローンの秘書である潜入捜査官モニカ・フェンテスを紹介された。それは、昨晩のレースで会った例の美女だった。FBIから新しい車を与えられたブライアンとローマンは、ドライバー候補としてベローンの邸に向かった。ドライバー候補たちの前に現れたベローンは、登場早々、押収されて保管所にある赤いフェラーリの中から大事なブツを取って来いと命令。ブライアンとローマンは、他のドライバー候補たちを出し抜いて保管所に一番乗りし、封筒に入ったブツを回収した。
任務を終えて邸に戻ると、ベローンは、ブツは単なる葉巻であり、保管所も自分の駐車場であること、そして、これがドライバーになるためのテストだったことを明かした。こうして、ブライアンとローマンは、ベローンに気に入られ、ドライバーとして採用されることになった。ベローンは、ブライアンたちに、ノースビーチからキーズまで運んでほしいものがあると告げた。それが本当の二人の仕事であり、成功すれば報酬は十万ドルだという。警察の妨害は必死であるが、それを封じる方法も、ベローンは密かに考えているようだった。
ベローンの邸を出て、テズの車屋を訪ねたブライアンとローマンは、腕利きのメカニックのジミーに、FBIから支給された車を調べさせた。案の定、車には取り外しができない発信機が付けられていた。だが、二人を監視しているのは、FBIだけではなかった。ベローンの部下のロベルトとエンリケが、邸を出てからずっと後をつけてきていることにブライアンは気付いていた。
エンリケたちをまいたブライアンとローマンは、ビルキンスたちと接触し、こちらの状況を報告した。例の運びの現場を押さえれば、ベローンのマネーロンダリングの証拠がつかめそうだったが、問題なのはモニカのことだった。モニカがベローンとデキていると睨んでいるローマンは、彼女が裏切るのではないかと考えていた。一方、ブライアンは、自分もドムの一件でFBIを裏切った過去があるたっため、モニカのことについてもなんとも言えなかった。
ブライアンとローマンは、自分たちの置かれている状況を話し合った。FBIとベローンの双方からにらまれ、仲間に裏切にれる可能性もある。事態は思っていた以上に深刻だった。ブライアンは、いざという時の逃走手段の確保が必要だと考えた……。