南北戦争中の平凡な家庭の四姉妹の姿を描く、オルコットの名作の三度目の映画化。

若草物語

LITTLE WOMAN

1949  アメリカ

122分  カラー



<<解説>>

ルイーザ・メイ・オルコットの自伝的小説「若草物語」シリーズの、1917年(イギリス製作)、1918年、1933年に続く四度目となる映画化(なお、五度目は1994年)。四姉妹の少女時代を描いた『若草物語』と、次女ジョーのヨーロッパ遊学を描いた『続 若草物語』までの内容を、設定やプロットの変更などに大胆な脚色を加えて描く。主演のジューン・アリソンは当時三十二歳にして、少女から女性へと成長していくジョーを瑞々しく演じる。
原作は、厳格な理想の家庭を描いた家族小説の典型と言われているが、日本でも80年代には何度かアニメ化され、女性を中心に世代を超えて愛されている名作である。作者の分身である男と子まさりの次女ジョーが、恋愛や勉学、大事な人や出会いと別れなどの通過儀礼を通して成長していく内容は、少女文学として「赤毛のアン」と人気を二分している。戦争と家族という背景の影響の大きい「若草物語」は、主人公の独立独歩の活躍をユーモアを交えて描いた「赤毛のアン」と比べると、物語の雰囲気が大きく異なり、シリアスで社会性の高い作品になっている。作家という大望を抱きながらも、人間関係については大きく踏み出せず、家族や姉妹の間での自分の居場所を常に探り続け、その中で感じる焦りや孤独は、真に迫るものがある。
正編と続編を二時間に圧縮した本作は、観客が原作を知っていることが前提としていて、ストーリーは省略が多くダイジェスト的で、見ごたえが薄い。「若草物語」の映画化というより、ボーイフレンドからの求婚、姉妹の結婚や闘病などの要所をすくい上げて、メロドラマとしたというのが本当であろう。やはり、最大の見どころは、ドラマよりは、個性的で美しいスター女優陣と南北戦争時代の家庭を再現したセットや衣装なのである。映画スターのファンにとっては文句のない作品ではあるが、原作ファンにとっていはどうも納得がいかないようである。こういうジレンマは原作付き映画には昔からつきものなのである。



<<ストーリー>>

南北戦争中のアメリカ北部。父が出征中のマーチ家は、母と四姉妹で貧しいながらも平穏に暮らしていた。
マーチ家の隣りは、金持ちのローレンス家の屋敷があり、そこには、学校を逃げ出し軍隊に入ったという青年、ローリーが暮らしていた。男の子にあこがれる活発な次女ジョーは、ローリーと友達になりたいと考えていた。
ジョーは、ローリーの祖父に気に入られたことで、念願かなって、ローレンス家のパーティーに招かれることになった。ところが、マーチ家の家柄や貧乏であることについて、招待客から陰口を言われ、ジョーは悲しい思いをするのだった。
やがて、父が戦争から帰ってきた。だが、一家そろった暮らしが戻ってきたのも束の間、四女のベスが近所でしょう紅熱をうつされ倒れ、闘病生活が始まった。
長女のメグがローリーの友人のブルックと結婚した。結婚式の直後、ジョーはローリーからプロポーズをされるが……。