現代にタイムスリップして来た中世の騎士と従者のコンビが巻き起こす騒動を描くコメディ。
おかしなおかしな訪問者
LES VISITEURS
1993
フランス
107分
カラー
<<解説>>
『グラン・ブルー』『ニキータ』以降、『レオン』前のジャン・レノが主人公が、そのキャラクターを生かした騎士を演じるファンタスティック・コメディ。従者役は、監督のジャン・マリー・ポワレとコンビでコメディ映画を作り続け、脚本も手掛けるクリスチャン・クラヴィエ。当時、人気の高まっていたジャン・レノを起用しているが、実質クラヴィエの主演作である。
婚約者の父親を誤って殺してしまうという不幸な事故を起こしてしまった中世の騎士が、それをなかったことにするため、魔術師に頼んで事件の前まで時間をさかのぼる魔法をかけてもうが、やってきたのはなぜか現代のフランス。騎士と従者の「ドン・キホーテ」的騒動を中心に、元の時代に戻ろうと悪戦苦闘する姿を、テンポの良いストーリー展開で見せていく。頭をからっぽにして、お気楽に楽しめる作品である。
本作には、ロマンスもなければ、ミステリーもないし、メッセージ性もない。現代社会への皮肉が、こめられいるのかと思えば、従者の口を借りて現代を称揚する始末。まったく他愛のない内容。ただ、現代の街や車や生活習慣におっかなびっくりしている騎士と従者の場違いぶりを笑うだけのギャグ主体のドタバタ喜劇である。よくもまあこんな企画が通ったものだと感心してしまうが、ギャグの純度は高い。勇敢だけが取り柄という朴訥な騎士と、粗野というよりほとんど動物みたいな従者の個性的過ぎるコンビは、居るだけで画が持ってしまう強烈さ。中世の衣装やタイムスリップのSFXが地味ながらも丁寧に作り込まれていることからは、くだらないだからこそしっかりと金をかけた製作者の誠意すら感じられる。1998年には、続編『ビジター』が公開された。
五年後の1998年に、続編『ビジター』が公開された。さらに十八年後の2016年には三作目が公開。
<<ストーリー>>
十二世紀のフランス。国王の危機を救った騎士ゴッドフロワは、伯爵の称号を受けるとともに、領主の娘と婚約。まさに、騎士生涯の絶頂にあった。ところが、ゴッドフロワは、彼によって火炙りにされた魔女の呪いにより、領主を殺めてしまった。
一気にどん底に落とされたゴッドフロワは、魔術師エウセビエスに頼んで、事件の起こる前に戻る魔法をかけてもらうことに。ゴッドフロワと従者ジャクイユは、エウセビエスから渡された魔法の薬を飲むが、気が付くそこには見慣れない景色。舗装された道路やそこを走り回る自動車に驚愕した。二人は、魔法の誤りで二十世紀に来てしまったのだ。
ゴッドフロワは、この時代の習慣や風俗にいちいちカルチャーショックを受けながらも、彼の子孫であるベアトリスに巡り合うことができた。ところが、騎士の異様な格好と異常な言動のせいで、すぐに病院へ入れられてしまった。どうにか病院を出してもらったゴッドフロワは、行方不明になっていた従兄弟として、ベアトリスの家へ引き取られ……。