麻薬取引現場で爆発が起こり五人の犯罪者が巻き込まれた。
生き残った一人の証言により、事件の背後に伝説的悪党の存在が明らかになる。
クライム・ミステリー。

ユージュアル・サスペクツ

THE USUAL SUSPECTS

1995  アメリカ

105分  カラー



<<解説>>

監督ブライアン・シンガー、脚本クリストファー・マッカリーの出世作。ガブリエル・バーン、ケヴィン・スペイシー等のクセのある俳優が五人の犯罪者に扮し、彼らが巻き込まれた恐るべき陰謀を回想形式で描いていく。巧みな脚本が評価され、ミステリーの手本として、映画ファンの間で語り草となっている。
粗筋だけ読むとなんてことはない話だが、構成の上手ささで見せていく作品であるため、映像で見なければその面白さはなかなか伝わりにくい作品である。しばしば、出来の良いミステリー映画は、「推理小説を読んでいるような」と形容される。本作も推理小説的な知的興奮を誘う作品であるが、映画ならではの時間処理を駆使した画期的なミステリーに仕上がっている。
現在と過去を並行して語るという構成を、尋問と言うシチュエーションによって自然に見せ、観客を物語世界に引き込んでいく。しかし、その語り方にこそ、最大の仕掛けが隠されている。シーンや台詞の順番をどこか一つでも誤ったら瓦解し得る緻密な構成。脚本の素晴らしさもさることながら、その危うい構成に説得力を与えた役者の芝居も、本作を成功させた要素のひとつと言える。



<<ストーリー>>

埠頭で船が炎上する事件が発生。船内では大規模な麻薬取引が行われていたようだが、現場にいた者はほとんどが死に、生き残ったのはたった二人だった。不死身と言われた元警官の大犯罪者キートンも、この炎上に巻き込まれて死んだというが、捜査官のクイヤンは、その死を疑い、生き残りの一人であるチンケな詐欺師のヴァーバルの尋問を始めた。
それは数週間前のこと。ある武器輸送車襲撃の容疑者として、常習犯である五人の男たちが留置された。その中には、キートンとヴァーバルもいた。五人は証拠不十分で釈放されるが、これをきっかけとして、彼らは協力して様々な犯罪計画を行うことになった。ヴァーバルは片足が不自由で気も弱かったが、頭がキレたため、参謀として仲間に加えられた。
ある日、キートンたちのもとに、コバヤシという弁護士が現れた。弁護士という肩書きは表の顔であり、その正体は裏社会では誰もが恐れる伝説的犯罪者カイザー・ソゼの仲間だった。コバヤシはキートンたちに、これから大規模な麻薬取引があることを教えた。訝る五人にコバヤシは、ことの経緯を説明した。実は、キートンたち五人が出会うようにし向けたのはソゼであった。これまでキートンたちは、そうとも知らずにソゼの仕事の邪魔をしてきたのだという。今回の仕事でその借りを返せというの気が、ソゼの要求だった……。