村の自慢の山は、実は山ではなく丘であったことが判明。
村人たちは丘に盛り土をして、山の高さの基準をみたそうとするが。
ウェールズに伝わる伝説を基にした寓話的コメディ。

ウェールズの山

THE ENGLISHMAN WHO WENT UP THE HILL,
BUT CAME DOWN A MOUNTAIN

1995  イギリス

99分  カラー



<<解説>>

舞台は1910年代、イングランド国境に接するウェールズの小村。イングランドからやって来た測量技師が、村の誇りである山“フュノン・ガルウ”を測量してみたところ、山と認めるには高さが足りないことが判明。その結果を承服しかねた村人たちは、頂上に盛り土をして高さをかせぐという強引な方法で丘を山にしようとする、という物語。ウェールズ出身の監督クリストファー・マンガーが、故郷に伝わる伝説をヒントにしたフィクションである。
たかが山。されど山。村人にとっては、単に高さをめぐる問題ではない。その“山”はウェールズとイングランドを分ける境であり、村を侵略から守ってきた戦略的な要衝でもあった。それが“丘”と切り捨てられること、それも、敵であるイングランドによるたった一回の測量によって判断されることは、村人の拠り所である価値の崩壊であり、さらにはアイデンティティの危機でもある。盛り土作戦の手段の馬鹿馬鹿しさと、その目的の切実さのアンバランスさが面白い。
ウェールズの歴史と民族問題というシリアスな背景を考えさせるが、おおらかな庶民の物語に徹することで、ひじょうに気持ちの良い作品に仕上がった。活き活きとした庶民の姿が本作の肝で、好色な宿屋や頑迷な牧師などのクセの強い人々も、愛すべき好人物として描かれている。ちなみに、フュノン・ガルウという山もしくは丘は実在しない。現代に改めて山を測量してみたら……という気の利いたオチは、イギリス流ジョークである。



<<ストーリー>>

これは、ウェールズのある村に伝わるお話である。第一次大戦中のある日、二人のイングランド人、ガラードとその部下アンソンが土地の測量のために村にやってきた。村人たちは、イングランドとの境にある自慢の山“フュノン・ガルウ”の高さがどのくらいかを賭けて大いに盛り上がった。ところが、ガラードたちの出した測量結果は、フュノン・ガルウの高さは、山と認めるには3メートル足りないというものだった。つまり、山ではなく、丘になってしまったのだ。
納得のいかない村人たちは、自分たちの“山”を取り戻すために議論を交わした。そして、村一番の女好きのモーガンは、頂上に盛り土をして、山にすることを提案。彼を目の敵にしていたジョーンズ牧師も、彼の提案に乗ることにした。さっそく、翌日から村人は一丸となって、山へ土を運んだ。また、モーガンは、時間稼ぎのため、ガラードを自分の宿に足止めし、若いアンソンには、村の娘ベティをあてがった。
盛り土作戦は順調に進んでいたかに見えたが、運悪く、その日の夜に雨が降りだした。盛り土の様子を見に行った戦争病みの若者が、雷鳴にショック受けて倒れしまい、その騒動を知ったアンソンは、モーガンたちの企みに気付き始めた……。