故郷を飛び出しヤクザの世界に飛び込んだ河内の暴れん者が遊女の足抜けに一肌脱ぐ。
勝新太郎主演の人気シリーズの一作目。

惡名

1961  日本

94分  カラー



<<解説>>

今東光の同名小説を勝新太郎主演で映画化した作品。河内出身で男気あふれるアウトロー・朝吉が、ひょんなことから裏社会に飛び込み、舎弟・貞を仲間に活躍する任侠物。シリーズ化されて全16作作られた。勝にとって「座頭市」に次ぐヒットシリーズである。2001年には的場浩司主演で再映画化されている。共演は、“モートルの貞”役の田宮二郎、中村玉緒、水谷良重、他。
紀念すべき第一作である本作では、朝吉が河内を飛び出した経緯、貞との出会いから、惚れた遊女を遊郭から救い出すため、遊郭を仕切る女親分と対決するまでが描かれる。もともとはやくざ嫌いの朝吉。ところが、人情あつく正義漢であることで、かえって、やくざ者と関わり合いになってしまう。結果、宿命的に裏社会の荒波にもまれていく。喧嘩が強いという設定ではあるが、腕っ節に頼んで目の前の敵をばったばったと倒していくというタイプのヒーローではない。本作では、意外と喧嘩に負けていて、腕力よりも度胸と優しさで男らしさを表現している。
着流し姿の勝新太郎のふてぶてしい魅力に尽きる作品。大胆不敵で自由奔放。一方で、女性に甘くてお茶目な一面(ちゅーのシーンがかわいい)も。「座頭市」よりも、俳優・勝新太郎のイメージに近いかもしれない。彼のような、映画を牽引できるスターは今や絶滅した。スター不在の現代を嘆くような後ろ向きな態度はよろしくない。しかし、本作を観直すにつけて、スターの輝いていた時代への羨望は禁じ得ないものがある。



<<ストーリー>>

河内で暴れ者の名を馳せていた朝吉は、惚れた人妻のお千代に妊娠したと迫られて、故郷を飛び出し駆け落ちをした。ところが、妊娠が嘘だと知った朝吉は、お千代を振って、今度は遊廓で出会った琴糸に入れ込んだ。朝吉は、実は気の毒な境遇であった琴糸に同情し、廓からの足抜きの手伝いをすることを約束した。
ある晩、朝吉は街のちんぴらの貞とひと悶着起こして、決闘をする羽目に。あっさり貞を打ち負かした朝吉は、喧嘩の腕を買われて、吉岡組の客人として迎えられた。だが、琴糸の足抜けの計画が、遊郭を仕切る松島組に知られてしまい、朝吉は吉岡組を出ることに。朝吉を兄貴として慕うようになった貞もついてきた。
琴糸が行方知れずになり、その間、朝吉は自分を好いているお絹という女の家に身を隠していた。朝吉はお絹に迫られて、結婚の約束をしてしまうのだった……。