アニメキャラクターの暮らす街“トゥーン・タウン”の存亡をかけ、
陰謀に立ち向かう人気キャラクターのロジャーと人間の探偵エディの活躍を、
実写とアニメと合成で描いたコメディ。

ロジャー・ラビット

WHO FRAMED ROGER RABBIT

1988  アメリカ

104分  カラー



<<解説>>

舞台は黄金期のハリウッド。人間とカートゥーンアニメのキャラクターが共存していたという設定のもと、人間の探偵とカートゥーンの人気キャラのコンビの活躍を、実写とアニメの合成で描く。スピルバーグ製作総指揮、ロバート・ゼメキス監督。ゲイリー・K・ウルフによる小説が原作となっているが、小説の設定はアニメではなく漫画である。
実写とアニメの合成は、フィルムを重ねるだけの容易さから、映画の黎明期から黄金期にかけて用いられた古典的な手法であって、新規性はない。しかし、一シーケンスだけでなく、全編にわたって合成をおこない、アニメのキャラクターを主役として人間の俳優と掛け合いさせながら、物語を進めていったとことのは画期的で、当時としても新鮮なものだった。これは、「ピンクパンサー」のアニメーターのリチャード・ウィリアムズとILMの職人技が可能にした。
カートゥーンの設定や彼らの扱いは、黒人や移民に対するそれとそっくりであり、社会的マイノリティとして意識して描かれてるところは、人種のるつぼアメリカならである。人間とアニメの掛け合いギャグ的の数珠つなぎ的面白さが前面に出ている一方で、ストーリーにはそうした社会派のシリアスな面もあり、大人の鑑賞にも耐える、ハードボイルドの優秀なパロディになっている。
本作は会社を超えて有名なカートゥーンキャラクターをカメオ出演させることを目指してた。ディズニーをはじめ、ワーナーのバッグス・バニーやMGMのテックス・アヴェリー作品のキャラクターまでも、許可の得られたものはとくかくなんでも登場しているので、それを探すというのも楽しみである。
ちなみに、スピルバーグとゼメキスのダッグ、ファミリー向け、ディズニー、視覚的な楽しさという大きな付加価値があるにも関わらず、なぜか、無料のテレビ放映(特に地上派)の実績が極めて少ない作品である。



<<ストーリー>>

人間とアニメのキャラクターが共存する1947年のハリウッド。そのはずれにはアニメたちの住む町“トゥーン・タウン”があった。探偵を営む人間のエディは、かつてはアニメとトゥーン・タウンを愛していたが、赤い目をしたアニメに弟を殺されて以来、大のアニメ嫌いになった。もうアニメとは関わらないつもりでいたが、ある日、アニメの撮影所の所長マルーンの頼みで、アニメのスターであるうさぎのロジャーの妻ジェシカの浮気調査をすることになった。
トゥーン・タウンと隣接するおもちゃ工場で、ジェシカの浮気相手とされる社長のアクメが殺された。捜査にあたった人間の判事ドュームは、犯人をアニメとにらみ、アニメ溶解液で溶かしてやると意気込んだ。一方のエディは、自分が盗み撮りした写真に写るアクメのポケットに遺言状らしきものがあるのを見て、彼の他殺に疑問を持った。
ドュームから殺人の容疑をかけられたロジャーが、エディの事務所に転がり込んできた。エディは、自分が唯一の頼れる人間だと訴えるロジャーが哀れになり、真相の究明に乗り出すこと。エディは、ガールフレンドのドロレスの働く酒場にロジャーを隠すが、アニメの部下“イタチ団”たちを従えてやってきたドュームに見つかってしまった。エディは、酒にからっきし弱いロジャーの性質を理由にし、どうにかピンチを切り抜けた。
アクメはトューム・タウンの土地を所有しているらしい。また、マルーンはアクメの遺言状を欲しがっていた。その二つの事実から、マルーンが事件のカギを握っていると考えたエディは、マルーンを訪ねて真相に迫ろうとするが、事件の裏にはトューム・タウンの存亡にかかわる重大な陰謀が潜んでいた……。