羊飼いの家に生まれた無学の少年が、厳格な父親と確執を経て、
言語学者へと成長し、自立していく姿を描く。
父
パードレ・パドローネ
PADRE PADRONE
1977
イタリア
114分
カラー
<<解説>>
異色の経歴を持つ作家のガヴィーノ・レッダの自伝的小説「父 パードレ・パドローネ ある羊飼いの教育」の映画化。羊飼いの家に生まれて字が読めないほど無学だったが、兵士を経て大学に入学し、言語学を学んで大学の講師になった半生を作家自身が、ほのぼのとしたユーモアを織り交ぜながら振り返っていく。本人役でレッダが出演。主人公の兵士時代の友人役にナンニ・モレッティ。
物語の舞台はイタリア領サルデーニャ島。島の厳しい自然の中で家族を養うため、理不尽なほど厳しく息子をしつけ、羊番として育てようとする父。何も疑問を持たずに父に服従していた息子だったが、都会に出て視野を広げたことで、今まで無縁だった学問に出会う。
言語学の才能に目覚めていく様が感動的。父親は徹底して悪役であるが、モチベーションを支えてくれたことへの感謝の念も感じられ、それも感動的である。父子の想いのすれ違いからくる確執、そして、父の子離れと子供の自立というテーマは普遍的で新規性はないが、語り尽くされることもない。本作では、いつまでも変わることのない島の牧歌的な風景がテーマの永遠性を象徴するようである。
<<ストーリー>>
サルデーニャ島の羊飼いの家に生まれた少年たちは、勉強を後回しにして、父親から家業を叩きこまれることが習わしだった。羊飼いエフィジオの息子ガヴィーノも例外でなく、小学校を辞めさせられ、羊飼いの修行をさせられていた。羊飼いの少年たちは、厳しい父親に反抗できない鬱憤を、獣を犯すことで晴らすのだった。
やがて青年になったガヴィーノは、アコーディオンという唯一の楽しみを得て、演奏に夢中になった。そんなガヴィーノを見たエフィジオは、息子が自分から離れて行くように思い、気が気でなかった。そんな折、ある羊飼いが殺された。
エフィジオは殺された羊飼いの家から、管理する人のなくなった畑を買い、ガヴィーノにその畑を任せてみることにした。ところが、次の冬に寒波が襲い、畑は全滅してしまった。畑も財産も失ったため、エフィジオ一家は皆、働きにでることになったが、ガヴィーノには父の命じるまま軍隊に入り、上京することに……。