少林拳の達人たちがひょんなことからサッカーチームを結成。
壮絶過ぎる試合を最新映像技術を駆使して描いたアクション・コメディ。

少林サッカー

少林足球

SHAOLIN SOCCER

2001  香港/中国

113分  カラー



<<解説>>

チャウ・シンチー(周星馳)の6本目の監督・主演作で、彼の名を世に知らしめたヒットしたコメディ。日本のカルチャーへの関心の高い彼は、四作目『食神』では「ミスター味っ子」と「料理の鉄人」をネタにした。そして本作では、中国武侠映画と「七人の侍」を下敷きに、「キャプテン翼」をはじめとしたスポーツ漫画やアニメの要素を取り入れた。
漫画ならではの荒唐無稽なアクションを、VFXとワイヤーアクション完全再現した映像が見どころで、それが本作のすべてと言っても過言でない。選手が目にもとまらぬ速さで動いたり、空中に舞いあがったりするに留まらず、必殺シュートが炎や嵐を巻き起こしたり、さらには選手の覇気をイメージ化するなどの漫画的表現もふんだんに取り入れている。個々のアイデアは借り物ながら、DJ的な構成センスが光り、オリジナリティの高い作品に仕上がった。
「少林拳でサッカー」という看板に偽りはないが、アクションがエスカレートしていくにつれて、少林拳でもサッカーでもなくなり、曲芸大会の様相を呈してくるナンセンスさは好みが分かれるところ。どうしようもなくくだらないとギャグと、意外性のまったくないベタなストーリー展開も、生真面目な映画ファンが眉をひそめそうである。だが、馬鹿馬鹿しい内容と映像の見事な合致は、そうした批評を吹き飛ばすほど爽快。つまりは、考えるよりも感じる映画なので、自分には合わないとお思いの方はご遠慮いただくのが得策だろう。しかしともかく、80年代のおバカな香港映画が、VFXという武器を得て、装いも新たに帰ってきたという印象で、うれしい限りである。



<<ストーリー>>

“黄金の右足”と呼ばれたサッカーのスター選手ファンは、大金のために八百長に手を出し、ある試合のPKを故意に外した。その時、暴徒と化した観客にバットで足をつぶされたファンは、引退を余儀なくされた。ファンに替わってスター選手になったハンは、その後、人気チーム“デビル”のオーナーとなった。ファンはコーチとして、ハンに二十年間奴隷のように尽くしてきた。いつか監督としてサッカー界に返り咲く夢が支えだったが、ある日突然、ハンにクビを言い渡された。その時、ハンから、あの八百長がファンの足をつぶすために彼が仕掛けた罠であったことを知らされるのだった。
悔しさと情けなさで、昼間からビールを飲みながら街をほっつき歩いていたファンは、ビルの大型ビジョンに映し出されたサッカーの試合に「あんな蹴りではダメだ」とつぶやく青年と出会った。荷運びのバイトをしていたその青年シンは、見るからにブルース・リーかぶれで、差し出した名刺(ただの紙切れ)には「怪力鋼鉄の足」などと書かれていた。少林拳を世に広めることを野望とするシンは、少林拳の素晴らしさを力説するが、ファンにとってはたわ言に過ぎなかった。ファンにビールの空き缶を投げつけられたシンは、すかさず蹴り返すと、それはビルの彼方へと消えて行った。
荷運びのバイトを終えて帰る途中、シンは饅頭屋の前で足を止めた。店先ではあばた顔の少女が粉をこねていたが、その無駄のない鮮やかな手つきにシンは心を奪われた。その少女・ムイに太極拳の心得があることを見抜いたシンは、即興のへたくそな歌で称賛。どさくさに紛れて饅頭をつまみ食いしてしまったシンは、その代金の代わりに、ボロボロのスニーカーをムイに預けて、逃げるように立ち去るのだった。
饅頭屋でのできごとをきっかけに、歌で少林拳を広めることを思いついたシンは、早速、少林拳修業時代の兄弟子“鉄の頭”に報告。“鉄の頭”の働くナイトクラブのショーで、早速、歌を試してみるが、客の不興を買って、袋叩きの憂き目にあうのだった。
翌日、街はずれを歩いていたファンは、ふと目にした煉瓦の壁にビールの缶がめり込んでいるのを発見した。シンと出会った街の中心からはかなり距離があるが、彼の名刺が挟まっているたため、自分が投げつけた缶に間違いなかった。驚愕したファンは、壁の向こうでさらに驚くべき光景を目の当たりにした。そこではまさにシンが、街の不良に囲まれ、いんねんをつけられているところだった。ケンカをしない誓いを立てていたシンは、ケンカをしない代わりにサッカーをする、などと言うと、近くに転がっていたサッカーボールを脚で自在に操って、不良たちを瞬く間に倒してしまった。
シンの足を検めたファンは、それがしなやかにして強靭であることを認めると、自分がサッカーのコーチであることを明かして、シンをサッカーに誘った。少林拳を広める大きなチャンスだと考えたシンは乗り気だったが、まず靴がないので、饅頭屋にムイに訪ねて、スニーカーを返してもらった。スニーカーはムイの手により、ほころびが繕われていた。シンは一緒にサッカーをやるチームメンバーとして、まず、“鉄の頭”を誘った。だが、昨日のショーでの一件での店をクビになった“鉄の頭”は、シンを恨んで彼を相手にしなかった。
シンには“鉄の頭”の他に四人の兄弟弟子がいた。四ヶ月も失業中の“魔の手”、証券マンになってビジネスしか頭にない“鎧の肌”、すっかりデブになっていた“空渡り”、貧乏と薄毛で世を恨む“旋風脚”。シンとファンは四人を順に訪ねてチームに誘うが、素気無い返事ばかり。シンの他にメンバーが集まらず、ファンの計画をあきらめかけていたその時、“鉄の頭”ら五人の兄弟弟子たちがやってきた。五人は、シンが訪ねてきたことで修業時代を思いだし、再び夢にかけようという気持ちになったのだ。
ファンのチームは早速、地元の不良に練習試合を申し込んだ。だが、試合が始まってみると、不良たちはルール無用でシンたちに殴る蹴るの暴行をくわえるばかり。それはスポーツとは言い難いものだった。見かねたシンは試合を中止しようとするが、これも試練だと言うファンが許さなかった。ついには、降伏した“鉄の頭”が、不良チームのリーダーの脱ぎたてパンツを頭にかぶるという屈辱を与えられることに。
だが、この耐え難い試練が修業時代の彼らを呼び戻すことになった。別人のような身のこなしになった“鉄の頭”が、頭突きで敵からボールを奪ったことを合図に、五人はそれぞれの得意技を駆使しながら、パスをつないでいった。彼らはボールを完全に掌握し、敵の手出しをまったく許さなかった。最後にシンがパスを受けたシュートを放つが、ボールは惜しくもゴールポストに当たった。鋼鉄のバーが大きく変型していた。
不良チームのメンバーを迎えることで選手の頭数がそろった。チーム“少林”を結成したファンは、ハンを見返すため、彼が委員長を務めるサッカー大会に出場することに……。