「アダムスのお化け一家」を映画化したファンタジー・コメディ。
アダムス家の主は家出していた兄と二十五年ぶりの再会を果たす。
だが、その男は一家の財産を狙う悪党が差し向けた偽者だった。
アダムス・ファミリー
THE ADDAMS FAMILY
1991
アメリカ
よ9分
カラー
<<解説>>
「アダムスのお化け一家」は、三十年代に漫画としてスタートし、六十年代にはテレビ・ドラマ、七十年代にはアニメ化されたキャラクター。ティム・バートンに影響を与えたとされ、映画化作品である本作の世界観は、まさに彼のそれに通じるものがある。監督は、後に「メン・イン・ブラック」シリーズを手掛けるバリー・ソネンフェルドで、彼のデビュー作となる。好評につき、続編も製作された。
お化け屋敷のような古びた大きな洋館に暮らすアダムス一家は、代々魔法使いや怪物といった異形者として、人間たちから虐げられてきた一族の末裔。幸せよりも不幸を、美や健康よりも醜さや病気を求めるといった、あべこべの価値観を持つ。道路標識を盗んで交通事故を引き起こすなどの行き過ぎた悪戯とともかくとして、概ね静かに暮らしている一家。ところが、アダムス家の財産に目のくらんだ悪党に騙され、思わぬ騒動に巻き込まれることになる。
個性的なキャラクターに扮する個性的な俳優陣、ゴシック調で統一された衣装と美術、センスが良く洒落た音楽、偽善や良識をぶっ飛ばすブラックな笑い。そのいずれも秀逸でバランスも見事だか、特に評価すべきところは、ダークな設定に反して能天気とも言える軽妙さだろう。借りに、ティム・バートンが手掛けていたとしたら、より暗く湿った大人向けの作品になっていたかもしれない。
常識はずれの化け物一家という設定は、単に驚きや笑いを誘うだけでなく、価値の逆転や対比によるアイロニーもよく効いている。化け物一家の視点を通して描かれる欲にまみれた人間の醜悪さ。怪奇趣味が際立たせる生き別れの兄弟の絆。そして、いちばん大きなテーマはやはり、タイトルそのまま「家族」。彼らの深く大きな家族愛には心が温まり、観終わった頃には、一家のことが大好きになってしまうこと請け合い。
<<ストーリー>>
古い不気味な洋館に暮らすアダムス家の人々は、とても奇妙で風変わり。というも、彼らは不幸を求め、怪奇を愛する化け物一家なのだった。毎年恒例の儀式、交霊会の日を明日に控え、家長のゴメスは思い悩んでいた。兄フェスターが女性をめぐる兄弟げんか原因で家を出て行って、今年で二十五年目。その間、彼はずっと罪悪感に苛まれてたのだ。
アダムス家の顧問弁護士タリー・アルフォードは、大きな借金を抱えていたため、大金持ちであるアダムスから、どうにか金を引き出そうと躍起になっていた。妻のマーガレットと一緒になって、アンティークの競売や新しい事業への誘いをかけるがいつも失敗。今日も、投資信託への誘いを先送りにされてしまい、ゴメスから今月の資金だけ受け取って、邸を後にすることに。
事務所に帰ったタリーを待ち受けていたのは、彼が数千ドルの金を借りていてる高利貸しで詐欺師のアビゲイル・クレイブンとその息子ゴードンだった。返済日を守れなかったタリーは、怪力のゴードンに吊し上げられるが、そのとき、ゴードンがアダムス家で見たフェスターの肖像そっくりであることに気付いた。タリーは、アダムス家の金を手に入れるアイデアをクレイブンに話した。
その夜、タリーとマーガレットは、交霊会の誘いを受けて、アダムス家を訪ねた。執事ラーチのオルガン演奏と一家の祈りにより、フェスターの零を呼び出すその儀式の最中、ゴメスの母グラニーがフェスターを気配を感じ、次いで玄関のドアがノックされた。フェスターが生きて帰ってきたのだ。驚き、喜ぶゴメス。実はやってきた男は、頭を剃り上げ、衣装も合わせてフェスターそっくりに化けたゴードンだった。
ゴードンを連れてきたのは、医師のピンダシュロス博士を名乗るアビゲイルでは、彼女は、バミューダのマグロ漁網に絡まっていたフェスターを引き取って、今まで育ててきたと説明。記憶はショックで失っていることにした。こうして、アダムス家にまんまと潜入したゴードンは金を探すことにしたのだが、あまりに一般家庭と違いすぎる一家の常識に困惑するばかりであった。
タリーによれば、金は邸のどこかにある秘密部屋に隠されているという。ゴードンは秘密部屋を探し出すチャンスを伺っていたが、思いがけずに、ゴメスの方から秘密部屋へ誘われた。書斎の隠し通路から地下深く下りたところにあったその部屋は、兄弟でよく遊んだ思い出の場所である。ゴメスは兄と昔話をしたかったが、まるで話がかみ合わず、毎日交わしていた合言葉も通じなかった。
ゴメスはゴードンに不信感を抱き、フェスターではないかと疑うようになった。はじめから、フェスターが偽者であることに気付いていた妻のモーティシアは、ある夜、ゴードンを墓場に呼び出し、化け物であったために処刑された祖先たちを紹介するとともに、「我らの敵を食いつくせ」という家訓を教えた。ゴードンはモーティシアの遠回しな脅迫にふるえあがり、アビゲイルに助けを求めた。
アビゲイルは医師としてゴメスの悩みの相談に乗る形で、ゴードンへの不信感を取り除くことに。フェスターを悪者にすることで、彼が家を出たことへの罪悪感を置き換えていたのではないか、というアビゲイルの説明に、単純なゴメスはすぐに納得し、ゴードンと仲直り。一方、ゴードンは自分に対する不信や疑いを払拭するため、一家の悪趣味や、長女ウェンズデーと弟バグズリーの過激な悪戯に積極的に付き合うようになった……