16世紀のフランスを舞台に、カトリックとプロテスタントの争いに巻き込まれながら、
愛に生きる王妃マルゴの姿を描くデュマ原作のドラマ。
王妃マルゴ
LA REINE MARGOT
1994
フランス/イタリア/ドイツ
159分
カラー
<<解説>>
アレクサンドル・デュマの同名小説を破格の製作費で映画化した大作。宗教戦争只中の中世フランスを舞台に、時の王シャルル9世の妹マルゴの波乱の半生を描く。
美貌と気品と奔放さを兼ね揃え、兄弟までも虜にしたマルゴが主人公。取り巻く男たちの間で心を揺らしながらも、最終的に青年貴族との愛を貫こうとするドラマだが、その美しい物語と対比的に描かれた血みどろの宗教戦争や策略の渦巻く宮廷の地獄絵図が圧巻。
前半は、旧教徒による新教徒の虐殺の段。剣で切り付けられて吹き出す血、足の踏み場のないほど折り重なった死体がとにかく生々しい。後半は、登場人物の思惑が錯綜する後半のサスペンス。一族の行く末を心配する母后、王妃に愛を貫く新教徒、三人の男の間でゆれる王妃、フランスの王座を狙う異国の王、疑心暗鬼のフランス王、それぞれの複雑な心理が面白い。
宗教や王室を題材にしていながら、大量虐殺や近親相姦、血まみれになって死んでいく王、極めつけは、王妃が生首を抱えるラストシーンまで、エログロの限りを尽くす。世の中で最も醜いのは宗教や王室であることを、凄まじいビジュアルで暴き立てたその内容は、テーマやドラマが全部すっとんでしまうほどのインパクトで、二時間四十分の長尺にして、目を離す一瞬の隙も与えない。
<<ストーリー>>
1572年のフランス。ヴァロワ家のギーズ率いる旧教徒と、ブルボン家コリーニ率いる新教徒の間で、血で血を洗う争いが起きていた。
ヴァロワ家出身の国王シャルル9世は病弱であったため、代わりに国の実権を握っていた母后カトリーヌ・ド・メディシスは、内乱を収めるために、娘マルゴを新教徒のナバール公アンリと結婚させた。
母后はマルゴの結婚を利用して、コリーニを暗殺しようとしたが失敗。一方、マルゴは結婚初夜、アンリと過ごさず、街で出会った行きずりの新教徒の男と関係を持った。
シャルル9世は、マルゴの結婚に対する新教徒の復讐を恐れて、旧教徒に新教徒の虐殺を命じた。こうして街には新教徒の死体があふれることになったが、マルゴはその中に先の晩に関係した男の姿を見つけた。マルゴはまだ生きていた男を救って逃亡させた。男はラ・モール伯爵という貴族だった。
マルゴは、ルーブル宮に残されたアンリの命の危機を知ると、彼を改宗させて窮地を救った。だが、新教徒に味方したことで母后の怒りを買い、マルゴは幽閉されてしまった。
ラ・モールは、命の恩人であるマルゴとアンリを救いだそうとするが……。