問題児ばかりの集まるクラスを担当することになった
海兵隊出身の教師の奮闘を実話に基づいて描くドラマ。


デンジャラス・マインド
卒業の日まで

DANGEROUS MINDS

1995  アメリカ

99分  カラー



<<解説>>

「ビバリーヒルズ・コップ」、「トップガン」など、ヒット作を連発するドン・シンプソンとジェリー・ブラッカイマーのプロデューサ・コンビが手掛ける学園青春もの。熱血教師が問題児相手に悪戦苦闘するというよくある話ではあるが、本作は実話(とは言っても、ハリウッドの“実話”だから、話半分くらいだろう)を基にしている。原作は、ジョン・ルアン原作でシリーズ化もされノンフィクション「ルアン先生にはさからうな」。主演はミシェル・ファイファー。
主人公は元海兵隊員という特殊な経歴を持つ教師ルアン。非常勤のつもりで教師になったのものの、問題児ばかりが集められたクラスを担当することに。ここで彼女は、海兵隊員での経験で得た特殊な技能と、持ち前の人の心をつかむ才能を発揮。ディラン・トマスの詩を教えるためにボブ・ディランを引き合いにだしたり、勉強のご褒美に遊園地につれていくなど、生徒の気を引くためにあるゆることをする。生徒たちが詩に興味を持ち始め、ルアンも一安心というところで、色々な問題が起こってくる。中でも教師が踏み込めない、家庭の事情という壁を前に、何も出来ない無力な自分を思い知ることに。
ルアンのクラスの生徒は皆、スラム街暮らしであり、持ち上がる問題も普通の学園ものとは質が違う。暴力、妊娠、麻薬、はては殺人というショッキングで深刻なものばかり。進学どころか卒業以前の問題である。不登校の問題にしても、子供が学校に行くのを拒んでいるのではなく、親が子供の教育を拒否しているという根の深さ。こうしたスラム街の生徒の姿を通して観客に意識させるのは、やはりスラム街を産み出したアメリカ社会の歪みだろうか。
過激なエピソードの連続と、学園ものを超えた社会派の内容を持ちながら、ドラマ部分は拍子抜けするほどソフトである。なにしろ、ここに描かれているのは、問題児を相手にした時の理想的な対処の実践と、その成功例なのであるから。空手や遊園地で釣ろうとする教師と、まんまと釣られる生徒。妙に純真で聞き分けが良い問題児たち。教師の語る夢や希望に満ちた熱い(ただしその場しのぎ無責任な)セリフ。ドラマとしての見ごたえという点では、まるで届いていないが、シンプソン&ブラッカイマーはヒューマンドラマを衒わず、潔くファミリーでも楽しめ娯楽ものに徹した。



<<ストーリー>>

元海兵隊員のルアン・ジョンソンは、結婚のために諦めていた教師の職を探し、友人のハル・グリフィスの紹介で、ノースキャロライナのバーモント高校にやって来た。教頭のカーラ・ニコラスに気に入られたルアンは、その場で即採用となった。ルアンは非常勤講師を希望していたが、英語教師として、“アカデミー”と呼ばれるクラスの担任させられることになった。そこは、スラム育ちの問題児ばかりが集められているクラスで、彼らを相手に授業をすることのあまりの困難さに、既に担任教師が三人も辞めているのだった。
ルアンが教室に入ってきても、生徒たちは彼女をからかうばかりで、まともに話すら聞いてくれなかった。このままではいけない。と考えたルアンは、元海兵隊員という経歴を活かし、教室で生徒たちに空手を教えることに。ルアンの予想通り、食いついてきた生徒たちだったが、校長のグランディから規則違反だとし、厳しく注意を受けることになってしまった。
ルアンはめげずに、今度はご褒美に遊園地に連れて行くと生徒たちと約束し、授業で詩を教え始めた。彼女は、ボブ・ディランの詩の教材にすることで生徒たちの好奇心を誘い、生徒たちもルアンに対して徐々に心を開いて行った。だが、不良のリーダー格であるエミリオ・ラミレスという生徒だけは、ルアンに逆らい続けていた。
ある日、校内でエミリオを中心にして暴力事件が起り、騒動に巻き込まれたルアンのクラスの優等的存在の生徒ラウルとグスマロが逮捕されてしまった。ルアンは、停学処分を受けたラウルとグスマロを家庭訪問し、その事で彼女はエミリアから一目置かれるようになるのだった。
ルアンは生徒の金銭トラブル、妊娠、不登校など、日々巻き起こる様々な問題に体当たりで向き合い、徐々に生徒たちからの信頼を得ていくが、ある日、決定的な事件を前にし、教師としての自信を大きく揺るがされることになる……。