村で除けものにされていた貧乏一家が日頃のうっぷんを“戦車”で晴らす。
「馬鹿シリーズ」三作目の寓話的喜劇。
馬鹿が戦車(タンク)でやって来る
1964
日本
93分
カラー
<<解説>>
『馬鹿まるだし』、『いいかげん馬鹿』に続く、山田洋次とクレイジーキャッツの「馬鹿シリーズ」の第三弾。架空の村を舞台に、貧乏を理由にいじめられていた村人の突飛な復讐と、その意外な以外な結末を昔話のような語り口で描く。主演はハナ肇、犬塚弘、ヒロインに岩下志麻。作曲家・團伊玖磨の小説「日向村物語」を原作としている。
徹底してカリカチュアされた登場人物に当時の日本の縮図を投影。戦争の記憶、貧困と格差、差別とイジメといった日本の影の部分を風刺。社会的弱者・被差別者の置かれた現実というテーマが、この監督の十八番にしては脚本でうまく処理できいない印象だが、むしろ初期衝動の混沌さと勢いが魅力である。映画的というよりギャグ漫画的な奇想天外な展開とブラックな笑い、そして、意表を突くラストの身につまされるような深い余韻など、その怪作ぶりでマニアの人気が高い作品。
<<ストーリー>>
ある地方の海にやって来た釣り人たちは、船頭からこの海に沈んでいるといわれるタンク(戦車)の由来を聞かされた。それはこんな話である。
山間のある村に貧乏一家がいた。戦時にはタンクの操縦をしていたという長男・サブと精神薄弱の弟・兵六、そして、ツンボの母親の三人で暮らしである。サブ一家は、いつも村人みんなから馬鹿にされていた。特に、村の地主でごうつくばりの仁右衛門とは、サブの畑の土地をめぐって、小競り合いが絶えなかった。
仁右衛門には病弱の娘・紀子がいた。彼女は父親とは違い、村の中でも数少ないサブの理解者であった。彼女は、病弱で長い間家からでることがなかったが、最近やっと病気がよくなってきた。起き上れるようになった紀子は幼いころによく遊んだサブの家を訪ねた。サブは、すっかり美しくなった紀子に惚れてしまうのだった。
紀子の快復祝いに、せいいっぱいめかしこんだサブが現れた。だが、仁右衛門をはじめて村人たちは、彼が貧乏であることを理由にサブを追い出し、さらには、彼の格好を笑い物にするのだった。サブは悔しさと怒りで酒をあおって大暴れし、警察のやっかいになった。サブは村会議員の市之進に金を借りて、釈放されるが、抵当として土地を取られるはめに。
さすがにやり過ぎたことに気付いた村人たちは、サブからのお礼参りを恐れたが、なぜか、彼は村人の前に姿を現さなくった。そして、数日後、村に轟音が響いた。サブが納屋に隠し持っていたタンクを動かしたのだ……。