怪盗チームが裏切り者に横取りされた金塊を奪い返すために計画した作戦とは。
60年代の作品のクライム・アクションを豪華キャストでリメイク。
ミニミニ大作戦
THE ITALIAN JOB
2003
アメリカ/フランス/イギリス
111分
カラー
<<解説>>
オリジナルは、1969年に公開されイギリス映画で、カーチェイスものの隠れた名作とし知られる同名の作品である。2001年には、下火だったカーアクションの新たな可能性を示した『ワイルド・スピード』、60年代のクライム・サスペンスのリメイクを大成功させた『オーシャンズ11』のヒットがあり、それらの流れに乗ったと見れば、必然的なリメイクと言える。
ヒロインにシャーリーズ・セロン、その父親役にドナルド・サザーランド、仇敵役にエドワード・ノートン。また、『トランスポーター』でスターとなったジェイソン・ステイサムも出演。個性的なキャラクターに合わせた個性的なキャストが揃った。監督のF・ゲイリー・グレイはミュージック・ビデオも多く手掛けいて、テンポの良いカットとカメラワークを見せる。
1969年版は、泥棒とイタリア警察との追いかけっこを描いているため、「THE ITALIAN JOB」という原題であったが、本作では、イタリアのシーンは冒頭のベニスだけで、警察とのかかわりもほとんどなし(ニアミスだけ)。専ら、アメリカ・ロサンゼルスのハリウッドを舞台に、金庫破りの父親を殺されたヒロインを含む五人の泥棒一味と、ベニスで盗んだ金塊を独り占めした裏切り者との対決を描いていく。赤・白・青三色の小型車が画面狭しと走る見せ場は作品の肝であり、オリジナルから引き継がれている。
泥棒チームと裏切り者の間には、途中からウクライナ・ギャングや東洋系の調達屋が絡んできて、物語の混迷を予感させる。しかし、泥棒チームと裏切り者の対立という構図は広げず、両者のシンプルな駆け引きだけ(警察すら出てこない)でクライマックスまで描ききる。ハリウッドの大作主義に与せず、疾走するミニと奇想天外な作戦の爽快感を伝えることに専念した引き算の引き算の演出が光り、良い意味で邦題通りのコンパクトな仕上がりとなった。豪華キャストから過度な期待をした観客には不満(「ミニクーパーのプロモーションビデオ」との揶揄も散見)だったかもしれないが、カウチポテトで観るには最良の佳作。
<<ストーリー>>
保護観察中のベテランの金庫破りのジョンは、ベニスから最愛の娘ステラに電話をかけた。ステラはジョンがこれから犯行におよぼうとしていることに勘付いた。ジョンは、これを最後に足を洗うことを約束し、電話を切った。ジョン、レフト・イヤー、ハンサム・ロブ、ライル=ナップスター、スティーブ、そして、リーダーのチャーリーの六人の仲間の今度の狙いは、とあるビルの金庫に納められた1300キロの金塊である。
先にスティーブがビルの一階の部屋に侵入。すぐ上の二階の部屋には狙いの金庫があった。その部屋では男たちがサッカーを観戦中だった。一方、ジョンたちは、ボートで水路からビルの下にあるドックに入った。ライルの指示で、スティーブは部屋の天井の、レフト・イヤーはドックの天井の正確な位置にペースト状の爆弾を塗り、起爆装置を貼り付けた。次の瞬間、同時に爆発。天井が抜けて、金庫がドックまで落下した。
ロブ、ライルは急いでドックからボートを発進させた。金庫が盗まれたことに気付いた男たちは、逃げていくボートに金庫が乗っているのを見て、後をボートで追跡。だが、ボートの金庫は偽物。本物は水の中であった。ジョンは水中で金庫の鍵を破り、中の金塊を取した。そして、通報をやって来た警察を水中から見上げながら、チャーリー、レフト・イヤーと静かに現場を離れたのだった。
人気のない雪山で合流した六人は、仕事の完璧な成功に祝杯を挙げた。分け前の使い道をジョーク混じりに語りあった後、六人は一台の車に同乗し、山を下りることに。だが、ダムの上で前方と後方からやってきた不審な車に行く手を阻まれた。それはスティーブの裏切りだった。スティーブは無抵抗なジョンを射殺。レフト・イヤーは慌てて車を発進させるが、前の車にぶつかり、ダムに転落。スティーブは水没した車を執拗に銃で撃った。チャーリーたち四人は酸素ボンベを使い、無事だった。
一年後のフィラデルフィア。街を愛車のミニクーパーで颯爽と走るステラは、父親譲りの天才的な鍵師である。しかし、父のような泥棒ではなく、客の依頼で合法的に金庫を開けるプロフェッショナルである。また、手の感覚だけを頼りにする父とは違い、ステラはハイテクを駆使していた。上得意の警察はテスラの凄腕に一目置いていたし、テスラ自身も絶対的な自信を持っていた。
ある日、ステラのオフィスにチャーリーが訪ねてきた。スティーブの居場所が分かったことを、ステラに告げにきたのた。スティーブが売った金塊の刻印から足がついたのだった。また、スティーブがワージントン社製の金庫を購入したことも突き止めていた。チャーリーはジョンの復讐のために、金塊を奪い返す気である。協力を求められたステラは、父の事件は過去のことだと言い、チャーリーを追い出すが、しばらく考えて、彼に電話でOKの返事をした。
ステラは、チャーリーとその三人の仲間とともにロサンゼルスにやってきた。スティーブは潜伏するどころか、ハリウッドの大邸宅に堂々と住んでいた。チャーリーの考える計画の概要はこうである。どうにかしてスティーブを邸から追い出し、その隙に金庫から金塊を盗み出す。取り返した金塊は車で運びだし、ユニオン駅で車ごと貨物車に乗って逃走する。
まずは、スティーブの邸の様子を偵察する必要があったが、セキュリティシステムは、まだ一度もハッカーに破られていないカーソン社のものであり、門は特殊な鋼鉄製、警備員が常駐する詰所付き。うかつに手を出せない厳重さだった。さらに一番の問題は逃走経路だった。ハリウッドは常に大渋滞であり、天才ドライバーのロブでもが駅まで三十分以上もかかるという。信号がすべて青なら話は別であるが。
レフト・イヤーがケーブルテレビのケーブルに細工をし、スティーブの邸のテレビとネットを遮断。スティーブは早速ケーブルテレビ会社に修理を依頼。その電話を傍受したチャーリーは、すぐに修理に向かうとスティーブの邸に連絡。ステラは修理業者に化けて、スティーブの邸に向かった。彼女は金庫の位置を確かめるという使命を果たすが、スティーブに口説かれてしまう。ステラは、父を仇であるスティーブに強い嫌悪を覚えるが、食事デートの約束を許し、邸を留守にさせるチャンスを作るのだった。
金塊の搬出は、ステラのミニクーパーを使うことにした。小回りの利くミニで邸内に乗り込むという大胆な作戦である。だが、一台では荷が重いため、もう二台追加。さらに改造を施し、極限まで軽量化をはかった。一方、レフト・イヤーは、スティーブの邸の門を爆破するため、チャーリーの友人の東洋人の調達屋“痩せの”ピートから特殊爆弾を調達。そして、ライルは交通管制システムへのハッキングを成功させ、信号機を操って逃走経路を確保できるようにした。
準備は万端。だが、作戦決行の夜、チャーリーたちがスティーブの邸に向かうと、予想外の事態が起きていた……。