義父から身代金を掠め取るため、男は妻の偽装誘拐を計画。
だが、実行を依頼した二人組が計画にない殺人を犯し、事態は悲惨を極めていく。

ファーゴ

FARGO

1966  アメリカ/イギリス

98分  カラー



<<解説>>

『未来は今』に続くコーエン兄弟の6作目。80年代のアメリカ北西部の田舎町で起こった偽装誘拐事件の顛末を描くサスペンス。画期的な犯罪映画として映画界に衝撃を与え、興行的にもヒットした。これまでマニア受けする作風で知る人ぞ知る存在だったコーエン兄弟の名を広く知らしめ、巨匠に名を連ねるきっかけを作った作品である。2014年にテレビシリーズ化された。
「実際に起きた事件」という断りが冒頭に出るが、B級ホラー映画にありがちな煽りのパロディで、物語はすべて創作である。従来のサスペンスの映画の定石を覆すような物語は、事件を捜査する警官が妊婦で、犯人が無計画に殺人を積み重ね、偶然の積み重ねで事件が終息する、といったようにプロットがめちゃくちゃ。しかし、人間の愚かさや哀しさを達観した視点と絶妙のユーモアで見せた脚本は大きな評価を得た。
語られる事件の陰惨に反して、のん気でいまいち真剣味のない登場人物たちを演じるのは、スティーヴ・ブシェミ、フランシス・マクドーマンドといったコーエン兄弟作品の常連のクセもの俳優たち。血なまぐささを漂泊するような妙に清潔感のある雪景色とスタイリッシュな映像美も見どころ。



<<ストーリー>>

87年。ミネソタ州ミネアポリス。金に困っていた自動車ディーラーのジェリーは、金持ちの義父ウェイドを騙して彼の金を手に入れようと画策。ジェリーは、ノース・ダコタ州ファーゴにカールとゲアという犯罪者の二人組に会いに行き、妻ジーンの誘拐を依頼した。
カールとゲアはジーンをさらうだけの約束だった。ところが、隠れ家のある隣町のブレーナードへ引き上げる途中、短気で凶暴なゲアがパトロールで通りかかった警官と目撃者を殺してしまった。
普段は平和なブレーナードで、突如起こった殺人事件。捜査に乗り出したのは、地元の警官で出産を間近に控えて大きな腹抱えるマージ。彼女は、犯人が乗っていた自動車を手掛かりに、自動車ディーラーを当たって行った。
ゲアのせいで殺人という大きなリスクを負ってしまったカールは、釣り合いをとるために身代金の値上げを要求した。ジェリーは、ウェイドから身代金を出させ、それを自分の懐に入れるつもりだった。だが、ジェリーを信用していないウェイドは、金を出し渋り、犯人との取引にも自ら行くと言い出し……。