社会現象にもなった人気アニメの劇場版の第2弾。
テレビシリーズで描かれなかった物語の結末を描く。

新世紀エヴァンゲリオン 劇場版
Air/まごころを、君に

THE END OF EVANGELION

1997  日本

87分  カラー



<<解説>>

福音をはじめ聖書や神話の世界をモチーフにした巨大ロボット・アニメの劇場版の第2弾。テレビシーズは、95年から96年にかけてレギュラー放送され、夕方という時間帯であったにも関わらず人気を博した。異世界ではなく近未来の日本を舞台としたディテール豊かな設定、毎回趣向を凝らした作画と演出、物語が進む毎に深まるばかりの謎、一貫して後ろ向きなアンチ・ヒーローとしての主人公。その新鮮な内容にアニメ・ファンのみならず、SFファンや好事家の間で話題となり、「エヴァ現象」なるブームを巻き起こした。劇場版や関連商品でビジネスとして成功をおさめ、オタクの産業化にはずみをつけた記念碑的作品であり、また、自閉症気味に自己世界を追及する「セカイ系」なるポップカルチャーも生み出すなど、文学や音楽への影響も大きい。
テレビシリーズは全26話であったが、後半辺りから登場人物の内面を延々と描く回が登場するなど、独特な世界観を提示してきていたが、ついにラスト二話では、前衛演劇のような自己批判問答に始終して、物語を破綻させる撃的な結末となり、物議をかもした。本作に先駆けて公開された劇場版第1弾『シト新生』は「DEATH」編と「REBIRTH」編の二部構成。前者は、テレビ版第1話から第24話の再編集。後者は、問題作のラスト二話を脚本から新たに作り直した内容となる予定だったが、制作上の都合で、第25話の前半部分のみという不完全な公開となった。本作は、「REBIRTH」編の完全版であり、新作第25話と第26話、および、追加シーケンスの三部構成であり、ようやく物語は完結した。
新たに描かれたラスト二話は、テレビ版とはまったく異なる活劇であり、物語の最大の謎であった「人類補完計画」の全貌が描かれる。しかし、結局のところなんだったのかは明確でなく、テレビ版同様に観客に課題を投げかける終わり方となっている。印象的なのは、「エヴァ現象」の渦中の製作者が周囲の熱狂に非常に冷静に目を向けていることで、第26話でヒロインの綾波レイを巨大化して見せたのは批評的である。さらには、同話の後半の夢についての問答からは、実写に転じて現実のエヴァ現象をコラージュし、極めつけは客席にカメラを向ける。続編をにおわすどころか、ファンに現実への帰還を促し、自らブームに引導を渡したのは潔良い。しかし、根強いファンに応える形で、2007年より新作の劇場版四部作「ヱヴァンゲリヲン 新劇場版」が順次公開。再びブームが過熱している。



<<第25話:Air>>

すべての使徒が殲滅されると、SEELEの老人達は、ゲンドウに人類補完計画の実行のため、エヴァを引き渡すよう迫った。ゲンドウがこれを拒否したため、SEELEはNERVに攻撃を開始した。
エヴァ2号機に搭乗したアスカは、SEELEの軍隊に苦戦していたが、ATフィールドが心の壁であることを理解し優位に立った。だが、その時、彼女の頭上にSEELEによって完成させたエヴァ・シリーズが何機も飛来し、再び窮地に立たされた。
ミサトはシンジに、自分の知り得たすべてを説明した。人類は十八番目の使徒であり、セカンドインパクトは、補完計画のために人為的に起こされたものだった。その時、アダムを卵に還元することで、補完は阻止された。だが、今度は、エヴァ・シリーズをすべて殲滅しなければ、補完が行われてしまうだろう。
既に戦意を喪失していたシンジは、ミサトに引きずられるようにエヴァの元まで連れていかれた。初号機は瓦礫に埋まり、出撃できる状態ではなかったが、2号機がエヴァ・シリーズに喰い荒されて無残な姿となった時、それに呼応するように初号機がシンジへ腕を伸ばした。