金星を滅ぼした宇宙怪獣キングギドラが襲来。
三大怪獣ゴジラ、モスラ、ラドンが地球を守るために共闘する。
“ゴジラ”シリーズ第5作。

三大怪獣
地球最大の決戦

1964  日本

93分  カラー



<<解説>>

1964年は、本多猪四郎監督による怪獣映画が三本も公開された。『モスラ対ゴジラ』、『宇宙大怪獣ドゴラ』、そして、この年の最後を締めくくったのが本作である。『宇宙大怪獣ドゴラ』の夏木陽介と、『モスラ対ゴジラ』の星由里子が、それぞれ前作とは別の役で主演。第一作、第二作で山根博士を演じた志村喬も出演しているが、別の科学者の役である。小国の王女が来日する設定とラストシーンは『ローマの休日』を意識している。若林映子が高貴な王女でミステリアスな金星人という難役を好演。ゴジラ、幼虫モスラ、ラドン、キングギドラの四体の怪獣が豪華共演。ゴジラは五作目、モスラは三作目、ラドンは二作目の登場。黄金の鱗がゴージャスな竜型の怪獣キングギドラは本作が初登場ということもあって、怪獣映画ファンの間で人気の高い作品である。
戦争や災害の恐怖の化身として描かれてきたゴジラが、本作において、はじめて人類の側について戦う。小美人の同時通訳によって怪獣の人間への気持ちを語らせる場面も画期的である。これまでのゴジラ像を描き替え、昭和シリーズはこの路線に変更された。アクション・シーンに関しては、投げ技や投石など攻撃のバリエーションが豊かになり、ダメージを受けたときの表情をアップで見せるなど、挙動が人間的なってきた。ゴジラがモスラを尻尾でけん引したり、ラドンがモスラを背負って飛行などの連係プレイも見どころで、後の怪獣映画もこのようなプロレス的な演出が増えていく。ゴジラの威厳は薄いものの、怪獣映画のエンターテイメントとしての側面という意味では、当時の頂点といえる。



<<ストーリー>>

その年は地球規模の異常気象により、日本は一月だというのに摂氏二十八度を越す暑つさが続いていた。異変は地球だけのことではなく、宇宙的なもののようで、世界各地で流星現象が報告されていた。そして、その流星の一つが北アルプスに落ちた。帝都工大の助教授村井は、黒部を訪れ、山奥で大隕石を発見。隕石は磁力とも引力ともつかない吸引力で、金属を吸いつける不可思議な性質を有していた。
左右両陣営の紛争が起きているセルジナ公国からサルノ王女が非公式で来日することになり、警視庁の刑事進藤が王女の護衛に任命された。来日の目的は、王位継承者である王女が自身の暗殺計画から避難するためだという。特別機で日本に向かっていた王女は、「立ち上がり、逃げなさい」という心の声に導かれるるまま、機外へ脱出。その直後、特別機は空中爆発した。
進藤の妹で、東洋放送「20世紀の神話」製作班の直子は、予言者出現の噂を聞きつけて取材に向かった。街頭で人を集めて語っていたのは、帽子とジャンパーで男装した女性だった。自分は金星人だと言うその女性は、地球人も宇宙世界の一員としての自覚と決心も持つべきだと聴衆に訴えかけると、近々、九州の阿蘇に異変が起こることを予言した。
話題の金星人の写真を新聞で見た進藤は、その容姿が事故で亡くなったはずの王女に似ていると感じた。もし、王女ならば保護が必要だが、写真の金星人は王室の証である黄金の腕輪を着けていなかった。その頃、セルジアでは反王女派が日本の新聞を見て、王女がまだ生きていることを知った。反王女派は殺し屋マルメスに王女の暗殺命令を下した。
直子は番組のため、金星人との独占契約を狙い、金星人が現れそうな盛り場を張り込んでいただが、次に金星人が現れたのは、先日、彼女が街頭で異変を警告していた阿蘇山だった。金星人は、「火山ガスでラドンが復活する」と告げると、その予言通り火口からラドンが現れた。
テレビ番組への出演のため、インファント島から小美人の二人が来日していた。出演を終えて帰島する小美人が、横浜桟橋で取材を受けていた最中、そこに金星人が現れて、「帰ってはならない」と小美人に警告した。その場に居合わせた直子は、金星人を身柄を引き取った。それを見た小美人は、何かを感じ取って帰島をとりやめた。小美人の乗るはずだった客船はそれから間もなくして、沖に現れたゴジラの熱光線に襲われたのだった。
黄金の腕輪が古道具屋で発見され、進藤と課長は、腕輪を売りに出した猟師を聴取した。猟師によると、腕輪は海で助けた女性から、帽子とジャンパーと引き換えに貰ったのだという。王女と金星人の写真を見せられた猟師は、「この人だ」と言った。進藤は王女を保護するため、直子が金星人を連れ込んだホテルに向かった。
その頃、部屋に一人でいた王女はマルメスとその仲間の襲撃を受けていた。ホテルの部屋に先回りしていた小美人が機転を利かせて部屋の明かりを消すと、マルメスたちは逃げていった。進藤が王女をホテルから連れ出そうとしたその時、港の方から爆発音が響き、続いて、怪獣の咆哮が聞こえてきた。横浜港でゴジラとラドンが対面したのだ。
翌日、進藤は、王女に精神科の大家塚本博士の治療を受けさせるため、富士山麓の研究所に連れて行った。王女を診察した博士の所見では、彼女の精神は正常とのことであった。だが、王女は自分を金星人だ言い張っていた。金星の高度文明を破滅させた宇宙怪獣キングギドラの来襲を地球人類へ警告することが彼女の目的なのだという。キングギドラ。それはいかなる怪獣なのか……。