修道院で育った悪戯っ子のマルセリーノ。
痩せたキリスト像のために食事を運んでいた彼の身にひとつの奇跡が起こる。
汚れなき悪戯
MARCELINO PAN Y VINO
1955
スペイン/イタリア
91分
モノクロ
<<解説>>
児童文学作家、ホセ=マリア・サンチェス=シルバの原作を映像化。
キリストや聖母マリアなど、聖人の像が動いたり光ったりするのは、民間伝承の類型として数多く伝えれている。本作は、そうしたキリスト教信仰に根差した伝承を題材にした、宗教的色合いの強い内容ではあるが、主人公の少年の無垢な心に焦点をあてたことで、信仰を越えて愛される名作となった。戦争後の廃墟の中にポツンとさみしそうに建つ修道院。そこで修道士たちに見守られて、明るく無邪気に振る舞いながらも、孤独を心に潜ませる少年。主役を演じたパブリート・カルボ少年のいたいけな愛らしさに、癒されること必死である。
物語は非常にシンプルであるが、その意味はというと、観る人の信仰や倫理観によってまったく変わってくると思われる。キリスト教徒であれば出来事すべてを受け入れて由とするのもしれない。しかし、そうでない人は単純に少年に運命に同情しつつ、幸福の意味について考えるのかもしれない。喜びなのか、哀しみなのか、捉え方は人それぞれだが、いずれにせよ、激しい感情を呼び起こすラストは涙を禁じ得ないほど感動的である。“世界一泣ける”とまでは言えないまでも、泣かせる映画としては比類のない作品である。
1991年に『マルセリーノ パーネ ヴィーノ』として再映画化された。
<<ストーリー>>
聖マルセリーノ祭がひらかれる村。ある一人の僧侶が、病床の少女に祭の由来を語り始めた――その昔、村に修道院を構えていた十二人の修道士が、門の前で一人の赤ん坊を拾った。赤ん坊は、マルセリーノと名づけられ、修道院で育てられることに。五年後、利発な少年に成長したマルセリーノは、他愛もない悪戯で修道士たちを和ませた。やがて、自分に母親のいないことを意識するようになったマルセリーノは、架空の友達を作り、孤独を紛らわせるようになった。
マルセリーノの悪戯は次第にエスカレートして行き、村の祭りを目茶苦茶にしてしまった。怒った村長は、損害を弁償する代わりに、修道士たちに立ち退きを命じた。それでも、いたずらをやめないマルセリーノは、とうとう、修道院の外でサソリに刺されるという事故を起こしてまった。止む無く修道士たちは、マルセリーノを危険の多い外に出さないようにしたのだった。
マルセリーノは、修道士たちから、「二階には大男がいるから決して行ってはいけない」と言いつけられていた。だが、退屈しのぎに、ちょっとだけのぞいてみることに。二階の奥の納屋にあったのは、大男ではなくではなく、磔にされたキリストの像だった。痩せたキリストの体を見たマルセリーノは、彼がお腹を空かせているものと思い、台所からくすねてきたパンを差し出した……。
<<スタッフ>>