四国の町の小さな名画座で映画に情熱を傾ける中年経営者の姿を描く人情喜劇。

虹をつかむ男

1996  日本

120分  カラー



<<解説>>

「男はつらいよ」のスタッフとレギュラー・キャストが故・渥美清に捧げた人情もの。渥美清の急逝で実現しなかった第49作『寅次郎花へんろ』に代わり、同作の舞台として予定されていた四国で撮影され、兄弟役で出演する予定だった西田敏行と田中裕子を起用。前作『学校U』に続いて、西田と吉岡秀隆が主演をつとめる形になった。ラストにはCG合成で寅さんが登場し、「渥美清に捧ぐ」と出る。ちなみに、題名はダニー・ケイの映画から。
「男はつらいよ」の終盤のエピソードで度々目にした、就活に嫌気を指して家出する満男さながらに、四国にやってきた青年(吉岡)が、地元で小さな映画館を営む冴えない中年の映画館主(西田)と出会う。映画の上映にかける映画館主を、ときに反面教師、ときに師として、人生を学んでいく。溢れんばかりの映画愛を表明した内容は、まさに日本版「ニュー・シネマ・パラダイス」。劇中にいくつもの名画のシーンが挿入されるという趣向は映画好きにはたまらなし、芸達者な西田の形態模写による名シーンの再現も愉快である。
本作には「男はつらいよ」の後を引き継ぐ松竹の看板シリーズが目論まれていたようだが、追悼ムードを振り払った明るい続編『南国奮斗篇』が一本作られただけで終了。同じく西田主演で既にシリーズ八作を数えていた「釣りバカ日誌」を看板とすることで落ち着いた。



<<ストーリー>>

東京で就職に失敗して家を飛び出した亮は、行きついた先の四国の町の小さな映画館“オデオン座”でアルバイトをすることになった。給料が少ないという不満はあったものの、経営者の“カッちゃん”こと活男の、より多くの人に映画を観てもらたいたという情熱に、亮はしだいに感化されていった。
カッちゃんは、オデオン座の常連である幼馴染で未亡人の八重子のことが好きで、映画館をやっているのも、実は彼女のためといっても過言ではなかった。だが、カッちゃんが思いを打ち明けられないうちに、八重子は再婚して町を出ていってしまった……。