群馬県沼田市を舞台にしたシリーズ第5弾。
何者からか命を狙われることになった美人姉妹を守ろうする刑事の姿を描く。
刑事物語5
やまびこの詩(うた)
1987
日本
98分
カラー
<<解説>>
武田鉄矢原作、主演の刑事ドラマ・シリーズ最終作。監督は、第2作と第3作を手掛けた杉村六郎。賀来千香子と鈴木保奈美の映画デビュー作である。その他のキャストは、署長役に井川比佐志、先輩刑事に村井国夫、キーパーソンの会社社長に小林桂樹と毎度の豪華さ。また、アバンタイトルでは、江夏豊が狙撃手役で登場している。
本作では、美人姉妹というダブル・ヒロインが登場。武田扮する片山刑事は、何者かに命を狙われる美人姉妹の警護するという立場である。片山とヒロインが相反する場面が多く、はっきりした恋愛感情を示すようなことはしないが、次第に微妙な三角関係へと展開していく。女にホレた男の哀愁は楽しめないが、大小のギャグやコントが散りばめられていて、笑いは意外と多い。
武田の拳法は初期に比べるとだいぶキレが増している。アクションのバリエーションも多彩で、ハンガーの代わりにテニスラケットを振り回したり、ハンガー三つをつなげて三節棍のようにした自作の武器も登場。ダムを背景にした黒幕との一騎打ちなどは香港映画と見紛うばかりである。
ラストシーンのサプライズは印象深く、ファンの間で語り草となっている。
武田鉄矢の自作自演シリーズは、「プロゴルファー織部金次郎」に続く。
<<ストーリー>>
群馬県沼田市。沼田中央警察署の刑事・片山は、立てこもり事件の突入中、転落して気を失い、犯人に助けられるという大失態を演じた。顔に泥を塗られた署長から大目玉を食らった片山は、十日間の謹慎処分を言い渡された。
片山の謹慎中、毒入り牛乳事件が発生。被害にあった牛乳配達員の証言により、描かれた容疑者の似顔絵は、片山そっくりだった。早朝のランニングをしているところを目撃されただけだったことが分かり、疑いの晴れた片山は、特別に謹慎を解かれて、捜査に参加することに。
片山は、危うく毒入りの牛乳を飲みそうになった真子と、その姉の直子の美人姉妹を張り込んだ。署長は通り魔の犯行だと考えていたが、片山にはそうは思えなかった。三本の牛乳のうち一本に毒が入れられていたということは、特定の誰かを狙っているということである。
ある日、片山は、直子と真子のアパートの郵便受けに針の仕込まれた花束が入っているのを見つけ、姉妹が狙われていることを確信した。だが、その確信が片山の判断を誤らせることになった。片山は、ゴミ収集所のポリバケツに時限爆弾が仕掛けられたと思いんで、近隣を騒がし、留置所へ放り込まれることに。
片山の代わりに、後輩の刑事・金井が、フィアンセとのデートを返上して、直子と真子の隣の部屋で張り込むことになった。金井は廊下で黒ずくめの怪しい男を発見し、逃げ出したその男を追いかけるが、男の反撃に遭って殺されてしまった。
金井が死んだことを知らされた片山は、直子の働くクラブに乗り込み、命を狙われる心当たりがないかと、直子に詰め寄った。その時、ステージ上でダンスショーを演じていた真子に酔っ払いたちがからんできた。酔っ払いたちを相手に大立ち回りを演じた片山は、通報を受けてやってきた警察の目から匿ってくれるよう直子と真子に頼んだ。だが、真子に裏切られた片山は、またしても警察にしょっぴれるのだった。
プロダンサーを目指してレッスンに励むかたわら、ゴルフのキャディのアルバイトをしている真子は、仕事中に黒ずくめの男たちに襲撃され、足を負傷した。片山に助けられた真子は、ようやく自分たち姉妹が命を狙われていることを信じた。片山は警察をクビになり、あとは懲戒免職の辞令待つばかりだった。それでも自分たちを守ろうとする片山を信頼した直子と真子は、彼が隣の部屋に張り込むことを許した……。