ショーン・コネリーが十二年ぶりにジェームズ・ボンドを演じた
『007/サンダーボール作戦』のハリウッド・リメイク。
ネバーセイ・ネバーアゲイン
NEVER SAY NEVER AGAIN
1983
イギリス/アメリカ/西ドイツ
135分
カラー
<<解説>>
65年に007シリーズの四作目として公開された『サンダーボール作戦』のリメイク作。『サンダーボール作戦』はいわくつきの作品である。もともとシリーズ第一作用の脚本だった本作を、原作者のイアン・フレミングが無断で小説化したことで問題に。裁判で争った結果、権利を得たマクローリーは自ら映画化しようとするが、イオン・プロで映画化したいブロッコリが待ったをかけた。マクローリーがブロッコリに譲り、ようやく完成したのが、『サンダーボール作戦』である。それから18年後、映画化権を保持していたマクローリーが、主演に初代ボンド役のショーン・コネリーを迎えてセルフリメイクしたのが本作である。
タイトルは、コネリーの奥さんが言った「もう(ボンドを)演らないなんて言わないで」という言葉からきているという話は有名。ストーリーの概観は、既視感に見舞われるほど、『サンダーボール作戦』とほぼ一緒であるが、18年前から進歩していないというわけではない。マクローリーが権利を有しているのは、007ではなく、『サンダーボール作戦』の脚本であるため、同じストーリーにせざるを得なかったのである。なお、同じ理由で、タイトルは“007”ではないし、あのお馴染みのテーマ曲も流れない(しかし、ミシェル・ルグランによるテーマ曲は秀逸)。無論、公式にも007シリーズとして認められていない。
ストーリーに進歩がないのことには、先の理由により目はつぶりたいが、シリーズ呼び物であるアクション・シーンについてはどうだろうか。同年公開で競作となった本家007『オクトパシー』に興行成績で敗れるという客観的事実を伝えれば十分だろう。つまりは、どう贔屓目に見たところで、コネリーの12年振りのボンド役という付加価値がすべての作品である。しかし、コネリーの芝居はその売り文句を裏切らない。寄せる年波から精悍なスパイ役には無理があるものの、全盛期のアクの強さは健在どころか、中年になってますます増しているである。それはまさに、英雄色好むを地で行く野生児であり、最近のボンドにある繊細さなどどこ吹く風。好みによりはするが、往年のファンの中には、ボンドはこれくらいヤンチャなほうがしっくりくるという人も多いのでは。
ちなみに、ボンドに情報をくれるガイド役にローワン・アトキンソン。こんなところで、ジェームズ・ボンドとミスター・ビーン、もとい、ジョニー・イングリッシュが共演していたとは。
<<ストーリー>>
イギリス諜報部のコード“00”が封印され、実務から離れていた“007”ことジェームズ・ボンド中佐は、訓練先のシュラブランド療養所で、怪しげな患者ジャック・ペタッチ中尉を発見。アメリカのスウォードレー空軍基地に戻ったペタッチは、手術した眼球をセンサーに当て、大統領のみにしか権限の無い核弾頭搭載の巡航ミサイルの発射を命令を発した。
発射されたミサイルは海上で消失した。犯罪組織スペクターによって回収されたのだ。スペクターの首領、ブロフェルドが、テレビスクリーンを通じて、NATOの首脳たちを脅迫。プロフェルドは、石油輸入予算全体の二十五パーセンを我々に提供しなければ二基のミサイルを爆破する、と告げた。かくして、コード“00”が復活され、ミサイル奪還の命がジェームズ・ボンドに下った。
ミサイル発射基地からペタッチは行方不明になっていた。スペクターに抹殺されたのだ。ボンドは、ペタッチの部屋で見つけた手がかりから、事件に大富豪のマキシミリアン・ラーゴが絡んでいることに気付き、彼を探してパナマに飛んだ。そのころ、ラーゴのヨット“空飛ぶ円盤”では、彼の愛人でペタッチの妹のドミノが、ラーゴから“アラブの涙”と呼ばれる宝石を贈られていた。
現地のガイド、スモール・フォーセットの案内で、ラーゴの身辺を調べていたボンドに、ファティムという女が近づいてきた。彼女は、スペクターの殺し屋だった。ファティムは、ボンドを誘惑しながら、彼を暗殺する機会を窺う……。