3本の川が合流するピッツバーグを舞台に、代々警官という家系に生まれた刑事が、
連続婦女殺人事件の犯人に迫るサスペンス・アクション。
スリー・リバーズ
STRIKING DISTANCE
1993
アメリカ
102分
カラー
<<解説>>
ブルース・ウィリス、サラ・ジェシカ・パーカー共演のサスペンス・アクション。ペンシルベニア州ピッツパーグを舞台とし、そこを合流地点とする3つの川を管轄する水上警察を題材にした刑事物語である。タイトルは、公開当時、“三途の川”のもじりという説もあったが、ピッツパーグの通称のことである(製作時の仮タイトルでもあった)。
曽々祖父から警官の家系で、親戚も皆警官という一族の中、自身もまた刑事という主人公トミー・ハーディ。彼は、担当していた連続婦女殺人死体遺棄事件の犯人が警官だと主張したことと、加えて、仕事の相棒だった従兄弟を容疑者への暴行で訴えたことで、署内で裏切り者のレッテルを張られ、一族内でも孤立する。それから二年後、水上警察に左遷させられたトミーの周辺で、再び連続殺人が巻き起こる。しかも、被害者はいずれもトミーと係りのあった女性であった。トミーは、犯行が自分に対するメッセージだと考え、犯人を正体を追う。
『ダイ・ハード』シリーズでの成功のおかげで、ウィリスにまだアクション・スターのイメージが強かった頃である。本作も、彼が刑事に扮しているだけに、怒涛のアクションの連続が期待されていたが、そのうよな観客の期待には応えられなかったようで、残念ながら代表作に数えられていない。しかし、中盤に主人公が水上警察に異動して以降の船、橋、ボート、水中でのアクションは、爆発炎上を多用した『ダイ・ハード』のような派手さはないが、ずぶ濡れになりながらの奮闘から必死さ伝わり、今観直してみると新鮮である。
サスペンスの面に関しては、“ラジコン・パトカー”と“赤ずきんの曲”で恐怖のアイコン化を行い、猟奇事件の雰囲気をふんだんに醸し出すこに成功している。主人公と関わりのある女性が次々と殺されていくという理不尽な展開も良い。それに対して、ウィリスの芝居は、同じ刑事ものである『ダイ・ハード』のイメージを払拭しようとするかように、言葉少なめで静かに燃える主人公を演じている。しかし、中身はマクレーン刑事とさぼど変わらず、始終、飲んだくれて、自身の置かれた惨めさをアピールしているばかり。探偵としてはさっぱり活躍できていない。
サスペンスと主人公のキャラクターとの間に距離感があるのは、肉体派の主人公が活躍する物語に、当時流行のサイコものを無理やりねじ込んだところに要因があるのだが、この乖離のつじつまを合わせるための意外性やご都合的な展開が楽しめるため、映画的には悪いものではない。頭脳労働が苦手な一方、行動力は並外れているが、いつも下手に動いて犯人に思うままに振り回されるばかりの主人公も味がある。普通ならここで、真相を突き止めて犯人にへの意趣返しとなるのだが、「犯人は警官かもしれない」という漠然とした推理からほとんど前進しないのもご愛嬌。想像の範囲をさぼと逸脱しない程度のサプライズが用意されているので、一定の満足感は得られる作品ではないかと思われる。
<<ストーリー>>
1991年のピッツパーグ。殺人課の刑事トミー(トーマス)・ハーディの家系は代々警察官で、父ビンスも市警察の現役の警官。おじのニック・デティーロと二人の従兄弟ジミーとダニーも同様に警官だった。ジミーは犯人逮捕の際に暴行をはたらいたとして裁判で係争中だった。ジミー告発の決定打となったのが、目撃者のトミーの証言であったが、彼は仲間を売った裏切りものとして軽蔑され、警察の中で肩身の狭い思いをしていた。
ポーリッシュヒル絞殺魔による連続殺人死体遺棄事件が世間を脅かし、犠牲者はすでに四人を数えていた。狙われるのはブロンドのグラマー女性ばかりで、犯行の際には犯人が警察の電話をかけ、受話器の向こうであかずきんの曲をかけるという異常さが際立っていた。警察は犯人をかなりの線まで追い詰めるが、いつも際どいところで逃げられていた。それは警察の手のうちを知るかのようであったため、トミーは、犯人は警官あるいは元警官だと考えていたが、署内でその主張に耳を貸すものはひとりもいなかった。
“あかずきん事件”の容疑者が盗難車で逃走中との無線連絡を受け、警察の懇親会に向かっている最中だったトミーとビンスは、逃走車を追跡した。トミーは、パトカーの厳重な包囲網をかいくぐり逃げる容疑者に執拗に食い下がるが、あと少しのところで容疑者の車と共に横転事故を起こした。気を失っていたトミーが気が付くと、容疑者は逃げ去った後だった。トミーは全身打撲だけで済んだが、ビンスは犯人に撃たれて死亡していた。
ジミーへの刑の宣告の朝。“あかずきん事件”の容疑者ケサーが逮捕された。だが、トミーは、ケサーがヤワな小男であるのを見て愕然とする。あれだけの大胆な事件をこの小男が起こせるとは到底思えなかった。トミーはニックに抗議するが、証人の存在が決定的だと言われ、突っぱねられてしまった。その日、ジミーは裁判所に現れなかった。彼は、彼の母が投身自殺したのと同じ橋の上にいた。駆けつけたトミーが思いとどまらせようと説得したがかなわず、ジミーは橋から飛び降りてしまった。
それから二年後、トミーは殺人課からリバーレスキュー隊に左遷されていた。ケサーの死刑が確定しても、“あかずきん事件”の犯人は警官であるとの主張を変えなかったからだった。トミーは酒浸りとなり、河川のパトロールの仕事に対しても無気力だった。ある日のパトロール中、本部から死体発見の報せを受けて現場に向かったトミーは、胸を銃で撃たれた全裸死体を引き上げた。それは、かつての恋人であったスチュワーデスのシェリルだった。
ジミーの自殺のことでトミーを責め、カリフォルニアへドロップアウトしていたダニーが二年ぶりに街に帰ってきた。トミーの家を訪ねてきてダニーは、ジミーの死のショックからトミーを責めてしまったことを謝まり、ジミー自身に問題があったことを認めた。和解したトミーとダニーは、壁の写真を見た。それは子供の頃、従兄弟同士三人揃って別荘で撮ったものである。トミーとダニーは写真を見ながら、将来警官になることを夢見ていた幼き頃のことに思いをはせた。
ある夜、トミーの家の電話をとると、受話器の向こうからあかずきんの曲が流れてきた。トミーが誰何しても相手は答えず、電話は切られた。トミーはすぐさま陸運局へ向かい、“あかずきん事件”の記録の中から、ケサー逮捕の決め手の証言をしたチケイニスという男のファイルを持ち出した。トミーはチケイニス行きつけのバーに向かい、ちょうど入店してきた本人を押し倒して銃を突きつけた。トミーは、チケイニスが誰に頼まれて証言したのか吐かせようとしたが、レスキュー隊の相棒である女性ダイバーのジョー・クリスマンに見つかり、止められてしまった。
チケイニスに逃げられ、真犯人を突き止めるチャンスもフイにしてしまったことで、トミーはジョーに当たり散らした。その時、ボートの無線に本部から死体発見の連絡が入った。ジョーとの喧嘩を中断して、現場に向かったトミーは、死体を見てショックを受けた。それは、トミーのかつての恋人であった看護婦のポーラの変わり果てた姿だった。トミーの元恋人が相次いで殺され、死体は川に捨てられた。しかも、犯人は自分に電話をかけてきた。トミーは現場にやってきたニックに、犯人がポーリッシュヒル絞殺魔であり、目的が自分に死体を見せるためだと訴えた。だが、ニックはアル中の幻覚だと一蹴した……。