会社の派閥争いに乗じて金儲けに勤しむお調子者を描くサラリーマン喜劇。
クレイジーキャッツ「無責任」シリーズの第2弾。

ニッポン無責任野郎

1962  日本

86分  カラー



<<解説>>

『ニッポン無責任時代』の姉妹作として作られた「無責任」シリーズの2作目。前作同様に、植木等扮する欲望に忠実なサラリーマン(主人公の名前は前作と似ているが別人)が、問題を抱える会社にあえてもぐりこみ、持前の要領の良さと人心をつかむテクニックを駆使して、成功を収めていく様をミュージカル形式で描く。前作とリンクするラストは唖然。
設定や構成は前作と似てはいるが、作品の印象は大きく異なっている。その要因は、主人公が叶えようとする欲が企業人としての野心ではなく、カネであるということ。がめつさと、セコさと、手段の選ばなさは前作よりパワーアップしていて、詐欺、横領、不法占拠と眉をひそめたくなるような無法ぶり。人を騙して高笑いする主人公はまるで悪魔のようである。さらに、彼と志を同じくする妻と二人で悪乗りの限りを尽くすという、高度成長期の盲目性を風刺したようなブラックな仕上がりになっている。
本シリーズは、高度成長期の世相を反映しているとして、この時代の喜劇映画の代表として挙げられることが多い。確かに、前作の主人公・平均の出世という目的は正統であり、その目的を軽やかに叶えていく主人公にはヒーロー的な面があった。そしてなによりも、希望に満ちた作品であった。しかし、本作は、カネへの欲望をあけすけに表現し、会社を金儲けの場としてしか見ていないモラルを欠いた本作の主人公・源等は、ヒーローどころか感情移入も難しい。この違いはどうしてだろうか。もしかしたら、前作がサラリーマンの手本として見られることを由せず、前作の評価へ反発する形で、平均の本性とも言える源等を生み出したのかもしれない。いずれにしても、クレイジーキャッツ本来の毒を発揮したという意味で、本作は傑作と言えるだろう。



<<ストーリー>>

王仁専務と幕田常務が次期社長の座をめぐって争っている明音楽器。そこに金儲けの匂いを嗅ぎつけたお調子者の源等(みなもとひとし)は、善は急げとばかりに明音楽器にもぐり込むことに成功。経理担当・丸山英子がやりくり上手でカネをため込んでいることを知った源は、早速、彼女のに言い寄った。下宿先の同僚と恋人との間を、おせっかいにも取り持った源は、自分と英子の結婚も決めたのだった。
ハネムーンから帰還後、集金係に任ぜられた源は、知り合いのサックス吹きのゲーリイを、外国のスミス楽器の社長の弟にでっちあげ、専務と常務に紹介。専務と常務が偽スミスに取り入ろうとしている間、源は集金したカネを自分の通帳に貯め込むが……。