学生時代に同性愛の関係になったモーリスとクライブ。
クライブは野心のため性癖を隠す一方、モーリスは禁断の愛を貫こうとする。
E・M・フォスターの小説の映画化。
モーリス
MAURICE
1987
イギリス
140分
カラー
<<解説>>
ジェームズ・アイヴォリーがE・M・フォースターの死後出版を映像化した作品。アイヴォリーがフォースターの原作を映像化した作品には、他に『眺めのいい部屋』と『ハワーズ・エンド』の二本あるが、本作はヒットした『眺めのいい部屋』に続いて製作された。
カレッジで出会った同性愛に目覚めたモーリスとクライブ。同性しか愛せない自分を受け入れたモーリスは、それを許さない社会の逆風にあい苦悩する。一方、政治家の野心を持つクライブは、同性愛者であることを隠さざるを得なく、モーリスとはまた別の形で苦悩していく。二人の対立を通し、社会通念や価値観を超えて真実の愛を求める人間を賛美する。
原作の書かれた二十世紀初頭のイギリスには封建的階級社会の残り香があり、同性愛という題材は大変なセンセーショナルなものであったことが想像されるが、テーマとしては、現代にも通じるものがある。義務や世間体の名のもとに誰もが様々なプレッシャーを受け続ける現代。主人公の深い苦悩と比べるのはおこがましいが、シンパシ―を感じる人も少なくないかもしれない。
また、時代がかったシックな衣装と美男同士の恋愛という耽美的な部分が強調されているところは、昨今のボーイズラブ作品のはしりのひとつとも言えて、そういった楽しみ方もできる作品である。
<<ストーリー>>
二十世紀の初頭のケンブリッジ大学。女嫌いのモーリスは、同級生のリズリーと訪れた寮で、古代ギリシャの少年愛に魅了されているクライブと知り合った。モーリスはクライブと親交を深めていったが、ある日、クライブから愛の告白をされ戸惑った。
大学卒業後、弁護士になったクライブは、法廷でリズリーが同性愛者として裁かれるのを見てショックを受けた。クライブは自分の将来のためにも同性愛であることを隠し、女性との結婚を決意。そのことをモーリスに報告したが、既にモーリスは男性しか愛せなくなっていた。
クライブの結婚に失意したモーリスは、自分も女性を愛せるようになるべきだと考え、家を出て診療所に入ったが……。