心と体が入れ替わってしまった男の子と女の子。
山中恒「おれがあいつであいつがおれで」を原作とした青春映画。
尾道三部作の第一部。
転校生
1982
日本
112分
カラー
<<解説>>
山中恒の児童文学「おれがあいつであいつがおれで」を映像化した作品。監督の大林宣彦の出身地である尾道を舞台としたり、主人公に8ミリカメラを持たせたりと、自伝的要素も加わっている。掛け値なしの尾道の風景をノスタルジックに見せたり、モノクロとカラーの映像を効果的な使い分けるなど、映像作家とし大きな評価を得るきっかけを作った。
原作の主人公は小六だが、本作は中三に年齢が引き上げられている。肉体的に成熟しかけた男女の入れ替わりというと、生々しいものを想像させ、実際、撮影にこぎつけるまでに周囲の反発があったそうである。しかし、現実にはもっとどろどろとした異性に対する性的な興味も、ユーモアにより中和されることで、品良く仕上がっており、現在では青春映画としても傑作のひとつに数えられている。
心と体があべこべになるという設定が、この年頃(思春期)の不安定な心と体の表現に対して新たな角度を与えたことが、青春映画としてのこの作品の功績だろう。一夫と一美自身が、用の足し方などの生理的なことから、異性に対する態度までをも解説するは、同年代にとっては、性教育的な意味があるかもしれないが、かつての少年少女にとっては、あの頃の自分たちが考えていたことを、多少の気恥ずかしさを伴って再発見させてくれる。特に、一美の自分の肉体への執着にはハッとさせられるものがある。
心が男になった一美を演じた小林聡美の男っぷりがすさまじく、どのシーンをとってもまったく隙がないのないのは驚きだが、一方、地味ながらも、心が女になった一夫を上品に演じた尾美としのりの好演もなかなか。しかし、二人ともこの印象で定着してしまっているため、今になって観ると、普段通りの二人にしか見えず、心が入れ替わる前の二人の方が、入れ替わっているように見えてしまうのが、なんとも残念である。
後の『時をかける少女』、『さびしんぼう』と合わせて、(旧)尾道三部作と称されいてる。2007年にはセリフリメイク作『転校生 さよなら あなた』が製作・公開されている。
<<ストーリー>>
8ミリカメラで映画を撮ることが趣味の中学三年生・斉藤一夫のクラスに、一人の女の子が転校してきた。その女の子・斉藤一美は、一夫を目にしてすぐに彼が幼稚園時代の幼なじみだということに気付き、大はしゃぎ。一夫は、いきなり馴れ馴れしく接してくる一美を疎ましく思った。その日の放課後、一夫は後についてくる一美を、神社のところで振り切ろうとしたが、そのはずみで一緒に階段から転げ落ちてしまった。
一瞬気を失ったが、一夫は何事もなかったかのように帰宅した。だが、体の違和感に気付き、鏡で確かめてみると、そこには一美の姿が。びっくりした一夫は、慌てて一美の家に向かった。そこで一夫が見たものは、泣き伏せる自分の姿だった。転落のショックで、二人の心が入れ替わってしまったのだ。二人は心と体が元に戻るまで、周りに気付かれないよう、互いに相手のフリをして暮らすことに。だが、一夫はと一美の交換生活はうまくいかず、一夫はなよなよした男の子、一美は乱暴な女の子という評判がついてしまった……。