父親の発明品のせいで、体がアリくらいに小さくなってしまった
子供たちの冒険を描く、アドベンチャー・コメディ。

ミクロキッズ

HONEY, I SHRUNK THE KIDS!

1989  アメリカ

93分  カラー



<<解説>>

体が豆粒のように縮んでしまった子供たちの体験する冒険をSFXを駆使して描いたディズニー制作の実写作品。「体が小さくなる」というシチュエーション自体は古今東西の童話やSFでやりつくされていて、アイデアとしても目新しいものではないが、本作は家族をテーマの中心に据えることにより、ユニークな作品に仕上がっている。ファミリー向けコメディとして好評を得て、続編が二作製作された。
縮小ものの代表作である『ミクロの決死圏』では、体を縮小はある目的のために行われたが、本作では、ハプニングによって縮小されてしまうため、冒険の目的は家族のもとへ帰ることである。舞台も隣り合う二つの家の中から一歩も出ることはなく、体が縮んでいる以外は、きわめて日常的な道具立てや出来事に限定されており、想像をかき立てやすいファンタジーになっている。ネタとしてもそれほど多くはないが、巨大なお菓子をたらふく食べたり、アリに乗ったりと、「もし、体が縮んでしまったら何をする」という問いに一通り答えてくれている。巨大セットと光学合成を主に用いたSFXは、現代のCGを使ったものと比べると見劣りするのは当然だが、想像力豊かなストーリーが補っているので、これで十分である。
体が小さいながらも、スケールは大きな子供たちの冒険の物語は、危機また危機のハラハラ感に加え、恋と友情、そして、せつないエピソードも盛り込まれ、アドベンチャーのお手本のような内容だが、一方、並行して描かれる親たちの物語はコメディ要素が強く、こちらは大人も楽しめる内容になっている。子供が行方不明になるというシチュエーションは非劇的だが、子供たちを心配するあまりにとってしまう突飛な行動を滑稽に描くことで、うまく喜劇に転嫁しているのは見事。発明家の頼りない父親という役にこれ以上ハマる俳優はいないと思わせるリック・モラニスの好演により、爆笑コメディに仕上がった。



<<ストーリー>>

発明家のサリンキーは、屋根裏の研究室で物体縮小装置の研究没頭中。完成すれば世界が一変するほどの大発明だったが、研究発表の土曜の朝になっても失敗続きだった。隣りのトンプソン家の主ビッグ・ラスは、サリンキー家からの装置を製造する際の騒音に安眠を破られ、朝から不機嫌だった。トンプソンは普段から、風変わりなサリンキーとその一家を「イカれている」と思っていて、両家の仲は良くなかった。
ウェインの妻ダイアンは、夫の研究費を稼ぐために働きに出ていて不在。ウェインが研究発表のため、出かけて行った後、家に遺されたのは、ボーイフレンドからダンスの誘いを待っている長女のエミーと、ウェインから芝刈りを言いつけられた弟のニック、そして、愛犬のクオークだけだった。
一方、トンプソン家では、一家で釣りに出掛ける準備の真っ最中だった。大きいことがいちばんだという信念を持つビッグ・ラスは、小柄な長男リトル・ラスにたくましくなることを願ってた。だが、リトル・ラスは、小柄で体力もないことに強いコンプレックスを持っていて、今日の釣りにに行くことにも乗り気ではなかった。
リトル・ラスがふと、サリンスキー家の方を見ると、エミーが音楽にあわせて床掃除をしていたので、それに見とれてしまった。その時、ラスとは反対に腕白な弟ロンは、ふざけて庭でバットを振り回していた。そのうちに、ロンはボールを打ち上げ、サリンスキー家の屋根裏に飛び込ませてしまった。それを見咎めたラスは、ロンの首根っこをつかんで、サリンスキー家に謝りに向かった。
ロンとニックがボールをとりに行っている間、ラスとエミーは話をしようとしたが、会話が持たない。両家は仲が悪かったため、実は、ラスとエミーは言葉を交わすのは初めてだったのだ。ニックとロンがなかなか戻らないので、ラスとエミーは心配して屋根裏に向った。ラストエミーが研究室に入ると、物体縮小装置が勝手に動き出していて、二人は装置から照射されたレーザーを浴びてしまった。
一瞬後、景色は一変し、天井は空を見上げるほど高くなっていた。狭かった研究室は先が見えないほど広大になっていたのだ。何が起こったのかわからなかった二人だったが、駆け寄ってきたニックとロンから状況を訊き、自分たちの体が縮んでしまったことを知った。ロンの打ち込んだボールが物体縮小装置のレーザー照射に偶然はまりこみ、レーザーの強さが調整されたことで、装置が“完成”してしまったようだ。
ウェインの研究発表は、証明が不十分のため、大失敗に終わった。意気消沈して帰宅したウェインは子供たちの姿がないことに気付き、探してみたが、どこにも見当たらなかった。ウェインは腰掛けて考えをまとめようと、研究室のソフォに腰掛ようとしたが、尻が空振りし、もんどりうって転んでしまった。ソファがいつもの位置から消えていたのだ。ムシャクシャしたウェインは、物体縮小装置を失敗作と決めつけて、破壊。ニックたちは必死でウェインに叫んだが、米粒のように小さな彼らの声が届くはずもなかった。ウェインは、床に散らばった部品をほうきで片づけて、ゴミ袋を裏庭の向こうの集積場に持っていったが、まさか、子供たちをゴミと一緒に捨ててしまったことには気付いてはなかった。
ゴミ袋から脱出したニック、エミー、ラス、ロンの四人は、目の前に広がるジャングルに唖然とする。それは、ジャングルではなく、サリンスキー家の裏庭だった。五ミリばかりの大きさになった彼らには、数メートルの裏庭も五キロもの距離になるのだ。芝はまるで大木。水たまりは河。蝶は体長十二メートルのプテラノドンのようだった。
帰宅したダイアンは、ウェインから子供たちがいなくなったことを聞かされ、電話で方々にあたってみるが、無駄だった。トンプソン夫妻も、うやく、子供たちがいないことに気付き、探し始めるが、手がかりはまったくつかめなかった。
ニックは、聴覚の鋭いクオークなら自分たちの声に気付くかもしれないと考え、花によじ登って口笛を吹いた。が、やってきたのは、蜂の大群で、その一匹にニックがさらわれてしまった。ラスはニックを助けようと、蜂にしがみつくが、蜂は抵抗して庭の上空を飛び回り……。