動物たちの王を宿命づけられたライオンの王子の成長を描くディズニー・アニメ。

ライオン・キング

LION KING

1994  アメリカ

89分  カラー



<<解説>>

89年公開の『リトル・マーメイド』よりディズニーの第二黄金期とされていおり、『美女と野獣』、『アラジン』と立て続けのヒットとなったが、全三作を上回る最大のヒットとなり、ディズニーの復活を決定付けたのが本作である。劇場長編アニメとしては、通算32作目となる。
続編二作がビデオ作品としてリリース。デジタル3D化されたバージョンが2011年に公開されている。また、本国でミュージカル化された後、日本では四季劇場による上演で大ヒット。今なおロング・ランを続けている。「ライオン・キング」と言えば、ディズニーより先に四季を思い浮かべる人も少なくないだろう。
一言でいえば、シェイクスピアの「ハムレット」を、ディズニーのお家芸である動物の擬人化の手法を用いてエンターテインメント化した作品である。壮大なアフリカのサバンナ舞台に、叔父に王である父を殺されたライオンの王子の復讐を描いていく。ただ、シェイクスピアが下敷きとは言っても、あくまで子供向けであるため、ストーリー展開はいたって単純明快である。
設定が似ていることから、手塚治虫の「ジャングル大帝」がよくひきあいに出されるが、テーマはまったく異なっている。本作には人間はいっさい登場せず、そのため、動物対人間という構図はない。エコロジー的な視点もほぼ皆無である。あくまでキャラクターを動物に置き換え、人間社会や人生の問題を扱っており、中でも、モラトリアムな若者が成長によって人生を見出し、なすべき社会的責任を果たそうとしていく姿が力強く描かれている。
唯一の難と言えるのが、日本語版で観た場合のミュージカル・シーンである。最近の作品だと演出がこなれてきていて違和感はさほどないのだが、歌詞の翻訳に起因すると思われる歌のもたつきが気になるかもしれない。しかし、さすがは動物を描かせたら天下一のディズニー。人物を描いた作品よりも豊かに感じられる動物の表情には、言葉の問題を補ってあまりがある。



<<ストーリー>>

ライオンの王ムファサが統治するプライド・ランドに、ムファサの子シンバが誕生した。ムサファは幼いシンバに、いつか王となる定めを持っていることを教えた。王の座を狙うムファサの弟スカーは、ハイエナと手を組み、ムファサとシンバ親子の抹殺を企んでいた。
シンバはスカーの罠にかかり、ヌーの群に襲われた。シンバを助けようとしたムファサは、スカーに事故に見せかけ、見殺しにされた。ムファサの死にショックを受けたシンバは、スカーの口車に乗せられ、プライド・ランドから逃げるのだった。
新しい王の座にスカーがつくが、彼の悪政により動物たちは貧困に苦しんだ。シンバの幼なじみナラは、助けを求めるため、旅を出るが……。